OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

旧作

『浜辺の女』(ジャン・ルノワール)

素晴らしかった。スコット、ペギー、テッド、3者3様の過去への執着、それらの作用によってドラマが進む。 ペギーとテッドの関係性は『散りゆく花』を連想したし、また、これより後の作品だが『めまい』に近いものを感じた。 テッドの家の美術はゴシックなも…

『ヒズ・ガール・フライデー』(ハワード・ホークス)

すでに評価が固まっているこの作品に私が何を言ったところで無意味なのだけれども、とにかく楽しんだ。それもほとんど古典ではなく、新作と遜色ない具合に。 90分のランタイムの中で会話の果たす役割は大きい。絶え間なく繰り出されるトーク、そのスピードに…

『ハナ 奇跡の46日間』(ムン・ヒョンソン)

レンタルDVDにて鑑賞。YUMEGIWA LAST GIRLS!これ、本当に映画館で観たかった。おそらく、没入の度合いが全然違ったはず。 まずこの映画の素晴らしさは、役者さんがきちんと卓球をしていて、プロの試合に見えることがあげられる。どこまでが本人の演技でどこ…

『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』(ジョン・カサヴェテス) 

レンタルDVDにて鑑賞。数年前までプレミア価格だった映画がレンタルで見られるなんて、改めていい時代になった。もちろん傑作! カサヴェテス監督はまだ『アメリカの影』と『フェイシズ』しか見たことなかった。それらの作品は確かにとても魅力的だが、パタ…

『フェイシズ』(ジョン・カサヴェテス)

レンタルDVDにて鑑賞。圧倒された。 終盤にある人物の口からこの映画のテーマがはっきりと語られていることの繰り返しにはなるけれども、カサヴェテスの即興的演技は人物の内面をあらわにする性質のものではなく、むしろその人物の浅さを露呈するものになっ…

『クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦』(原恵一)

原恵一作品となっては今となっては感動モノの印象が強いけれど、こちらは(確かに感動する要素はあるものの)娯楽に徹している印象。楽しかった。 ギャグのハチャメチャさはなりを潜めている。まつざか先生のカラオケやIZAMの登場が浮いている気はするが、全…

R-18文学賞 vol.1 自縄自縛の私(竹中直人)

正直にいえば序盤〜中盤はいまいちかなと思っていた。キャラクターが平板でその他の描写もリアリティがなく、役者でひっぱるのも難しいのかと。ただ、このちゃちさが終盤の展開に活きてくるように感じた。 ラスト40分、往年のロマンポルノを思わせるような展…

おもひでぽろぽろ(高畑勲)

なんだろうな、これは。自分の中では、いいところとすんなりと呑み込めないところが混在している映画という印象で。 まず、日常の動きを再現するために細かいところまで気を配った動画が素晴らしい。情報量の多い動きによって、絵に命を与え、観客にとっては…

JUNO ジュノ(ジェイソン・ライトマン)

ジェイソン・ライトマンはこの作品と続く『マイレージ、マイライフ』において、明らかに映画にマジックが起きているとしか思えない。素晴らしかった。 僕、『パシフィック・リム』みたいな映画を見ても「なんでこれを日本でつくれないんだ」とは思わないんで…

ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!(アレクサンダー・ペイン)

とても面白かった。一時も飽きることなく見ることができ、アレクサンダー・ペインの優秀なストーリーテリングを堪能。 最初は複数の語り手が存在する作りに、これは奇抜かもしれないけど映画としてはどうだろうと思っていたんだけれども、改めて振り返ってみ…

ラルジャン(ロベート・ブレッソン)

はっきりいって呑み込めてないです。昔の映画を評するのに、それより後に発表された愚を覚悟で言うなら、連想した作品は『ザ・マスター』と『シークレット・サンシャイン』だった。 こういうのが俺の甘さだというのは自覚しているけど、あれほどまで映画上で…

ガンモ(ハーモニー・コリン)

コリン監督作を観るのは2作目。竜巻によって疲弊した町を描く。中心になるのは、ちびでやせっぽちな青年と背の高い青年のコンビが色々と非倫理的なことを繰り返すだけで、ストーリーらしいものはない。猫好きは注意。 一応中心になる青年たちのエピソードの…

悪の法則(リドリー・スコット)

ライムスター宇多丸さんをはじめとする色々な人の批評で補助線が引かれていたこともあってか、この映画の持つ不穏さが自分にとって合致するような、映画経験でした。 ぼくにとって、『悪の法則』は2013年の1位に選んだ『ゼロ・ダーク・サーティ』と同じ効用…

甘い鞭(石井隆)

ちょっとネタバレせずに語るのが難しい作品。オープンエンドではあるけれど、ストーリーの肝が評価を左右するように思えるので。 最近の石井隆は『ヌードの夜』以降また若返っているように思う。これも『フィギュアなあなた』ほどではないにせよ変な映画だっ…

共喰い(青山真治)

ぬめっとした嫌な感触が全体を覆っているが、ロケーションの豊潤さにより映画として満足。よくよく考えれば、冒頭はほぼナレーションによる状況説明なのだけれども、なんというか、「場」から物語が立ちあがる感じがした。つまり、この映画の舞台となった下…

三人の妻への手紙(ジョセフ・L・マンキーウィッツ)

思ったよりも大胆な構成。いきなり話題に出ている人物のナレーションが入ったり、回想が本編を食ったり。しかしながら、マクガフィンが虚実を明らかにする展開が見事。つまり、その場にはいないアディという女性が映画全体をひっぱるわけです。そしてアディ…

風と共に散る(ダグラス・サーク)

これは三宅隆太監督が言うところの「心霊映画」。なんせ冒頭から風でカレンダーが逆にめくれるところから始まっている。この部分のアニメーションが不気味でよかった。ほとんどアバンタイトルの部分はゴシックホラーの要素もある気がする。 この時期(1950年…

桜、ふたたびの加奈子(栗村実)

日本版『ラビット・ホール』だった。 お涙頂戴映画の皮を被ったジャンル映画(ホラー?)として一部で評価が高い本作ですが、わりとまっとうに楽しめました。結構演出が面白い。冒頭の葬式シーンはわりと長めのカットをとるし、その他にも「なんでこんな撮り…

アカルイミライ(黒沢清)

黒沢清作品で一番思い入れのある映画なので、ちょっとこの映画との思い出について語らせていただきます。 改めて感じたけれど、「東京映画」だと思うんです。この映画が公開されたのは、僕が高校から大学に上がる頃。実は劇場では観ておらずレンタルになって…

わが青春のマリアンヌ(ジュリアン・デュヴィヴィエ)

松本零士にメーテルのインスピレーションを与え、早川義夫に「マリアンヌ」という名曲を作らせたのも納得の傑作。狂気の入れ子構造が見事だった。 この物語を牽引する人物は、すべて外界からもたらされたもの、つまり「転校生」なんです。だから、物語が進む…

熟れすぎた乳房 人妻(曽根中生)

とてもよかった。『恋の罪』(園子温)とテーマが一部重なるような気がした。今の自分は、この映画が果たして「行ったっきり帰ってこれなくなる話」なのか「行って帰ってくる話」なのかがつかめずにいる。 まず、演出のエキセントリックさは前半のほうが大き…

依頼人(ジョエル・シューマッカー)

TVにて鑑賞。おそらく、かなりカットされているので正当な評価はできないけれど、それなりに楽しめました。 『依頼人』について興味深いのは、この映画の中で「父親」的な存在が物語の中心から排除されていること。出てくる男性は、例えば殺し屋のアンソニー…

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命(デレク・シアンフランセ)

デレク・シアンフランス監督の前作『ブルーバレンタイン』もかなりよかったのだけれども、あの映画で倦怠期のすれ違いを描いていたが、さらにスケールが拡大した本作ではより普遍的な方向に進んでいたように思う。シアンフランス監督は、感情のドラマをきち…

ビフォア・サンセット(リチャード・リンクレイター)

私自身は3年前に『ビフォア・サンライズ』を観てから、間をおいて今回続編を観ることにした。 映画の中でも現実においてもあの甘い思い出から9年経っている。 最初は明らかに取り繕っている会話だってのがわかるので、ちょっと乗り切れなかったのだけれども…

嘆きのピエタ(キム・ギドク)

これはすごい。過去のキム・ギドク作品に比べわかりやすくなっているものの、相変わらず凄惨。でもどこか穏やかなものも感じる。 プロット的な部分の特異さもそうなのだけれど、キム・ギドク映画の中では明らかに現実のコードを逸したものが出てきて、それが…

ローン・レンジャー(ゴア・ヴァービンスキー)

このクリシェはあまり使いたくなかったが、「映画館で見たかった!」。映画史に残る11分のクライマックスという宣伝文句も誇張ではない。ウィリアムテム序曲がかかった瞬間、泣きました。 西部劇映画に詳しくないので、すべてのカットがキマっていて映画的快…

散りゆく花(D.W.グリフィス)

勉強中の身なので非常に当たり前のことを言う。無声映画なので動きですべてを表現する。その中でも、怒りや恐怖の表現はすさまじく、未だに余韻を残している。特に、終盤を支配する、ルーシーの父・バロウズによる感情の表現といったら。 完全に動き(と劇伴…

暗殺の森(ベルナルド・ベルトリッチ)

今まで見ていなかったことが恥ずかしい。オールタイムベスト入りです。 正直に言えば時代背景の理解が浅かったことから、ストーリーを完全に理解したとは言えない。ただ、映像が何よりも雄弁に語ってくれる。要は、マルチェロの不安定な内面の揺れに呼応して…

ポンヌフの恋人(レオス・カラックス)

今年は積極的にこの言葉を使っていこうと思うけど、「言語化できない」。ストーリーは散漫だけど、映画的としか言いようのない映像の連続で、すげえと思った。ただ、なぜすげえと思ったか言葉にできない。 よくアルモドバルの映画なんかでポスター等女性の顔…

『みな殺しの霊歌』(1968年・加藤泰監督)

非常に独特。バランスは明らかにおかしいし、ラストもぶつ切りなのだけれども、それゆえ変な余韻を残す。やはり黒と白のコントラストが理屈よりも先に生理的な反応を作り出しているのがすごい。 内田樹はマイケル・ダグラスの映画を例に出してアメリカ映画に…