日常で抱えている鬱憤と作品の発するメッセージが一致する瞬間がある。そういった瞬間のために僕は映画を見ている。 最近少し嫌なことがあった。「強い者」が自分より弱いと思い込んでいる相手を選んで喧嘩を売り、さらに強い者からの攻撃はうまくかわして世…
アイドルに夢中になったことはない。 確か中学高校の頃は広末涼子とか優香がいたし、モーニング娘。も全盛期だったけど、当時の僕はロックが好きで、自分で曲を作って自分で唄うことこそ芸術表現だと思い込んでいた(もちろん今はそう考えていません)。あと…
結構、気を遣っている。 2015年現在、細田守、という監督を巡る言説についてはいろいろややこしい。 はじめに、細田守作品の持つ思想や雰囲気が苦手という人と好きという人がいて、まずここで評価が分かれる。細田守作品はこういった思想を持っているので苦…
髪がピンクの少女に出会ったのは人生のエアポケットの時期だった。 と、書くとなにやら怪しいロリータ小説でも始まりそうだが、なんのことはない。人生の中で少々落ち込んでいた時期に『少女革命ウテナ』('97/幾原邦彦)を観て感銘を受けたということだ。 決…
夏である。特に今年の夏は猛暑だ。そこで冷ややかな映画を紹介したい。 90年代の日本映画には夏の香りがする。特に、あのフィルムのざらつきが、他のどの時代のどの国の映画よりも「夏」を思い起こさせる。 僕は勝手にその感触を「夏のぬけがら」感と呼んで…
平成27年8月1日から公開された映画『進撃の巨人 Attack of titan』('15/監督:樋口真嗣)にて特殊造形を担当した西村喜廣(またの名を西村映造)さんのツイートが炎上している。みんな映画はハリウッドがいいんだね!じゃあハリウッド映画だけ観ればいいよ…
「物事を始めるのに遅すぎることなんて無い」なんて嘘っぱちだ。サボっていたツケは必ず払わされるし、若い時からコツコツやっていた連中には敵わない。それでも、始めないという選択肢は、無い。 『百円の恋』('14/監督:武正晴)。実家でニート暮らしを…
椎名林檎がフジロックに出演した際に以前のツアーでグッズとして販売された旭日旗が振られたことについてあちこちで話題になった。個人的な所感としては、たとえそれがユーモアだったにせよ、椎名林檎サイドもデリケートさに欠けていたかなという印象を持っ…
浅野忠信のことで口論になったことがある。近年のハリウッド映画や巨匠の映画に出演するようになった浅野忠信を批判する人に対し、そういった活動も肯定的に捉えている自分が反論したのだ。脚本をそのまま読んでいるような演技は誰でもできるからと彼は言っ…
青春映画の定義について考えた。僕ももう30過ぎのおっさんなので、さすがに今の自分が青春時代にあるとは思っていない。まあ、「青春」という言葉に少しの気恥ずかしさを込めて、青春が過ぎ去った者として考えるのは、すべての青春映画がそうだとは言わない…
「厄介な女」がいた。反発だって覚えるし、一緒にいても幸せになれないことはわかっているのに、どうしようもなく惹かれる女が。 今や『劇場版テレクラキャノンボール2013』('14)で世間の注目を集めることとなったAV監督・カンパニー松尾がキャリアの初期に…
※ 内容に触れています 2015/6/14・15@シネマQ 漫画原作の映画作品に関する感想文の枕を、それとは別の漫画の話にしてしまう非を許してほしい。 月刊アフタヌーン誌にて1994年から2006年にかけて連載されていた『ヨコハマ買い出し紀行』という漫画がある。…
プロインタビュアーとして名高い吉田豪が、ジャンルは違えど各分野で名を馳せているサブカル有名人が40歳前後に経験した「うつ」についてインタビューをした『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間文庫カレッジ)を読んだ。サブカル・スーパースター鬱伝 (…
カナダの映画監督であり、女優でもあるサラ・ポーリーが自らの出生について描いたドキュメンタリー映画『物語る私たち』を観て、とにかくこの観たときに感じた快とも不快ともいえない感情について吐き出さなくては、そして他者と共有しなくてはと感じた。 初…
思えばロックを聴かなくなった。 中学・高校・大学とロックを聴いてきた人間がそれを聴かなくなるというのは、ひとえに青春の終わりを意味するとも言えるわけで、そら確かに焦りはある。 ここでロックとわたくしとばかりに自分史を一席講じても良いのだが、…
1999年製作。ジム・ジャームッシュ監督、フォレスト・ウィテカー主演の一風変わった殺し屋を題材にした映画。 はじめに言っておくと、この映画の全容をつかめた気というのはまったくしなくて、どんな言葉を紡いでも浅いものになりそうな気がしている。だから…
レンタルDVDにて鑑賞。アイドルグループの東京女子流を主演に据えた青春ドラマ。文化祭のミスコンをめぐる一幕を描く。監督は新進気鋭の女流監督山戸結希。 初めて見たとき、明らかに「不快」よりの感情だった。でも、時間が経って反芻するうちに、ひょっと…
アニメ映画ベストテン アニメ映画ベストテン - 男の魂に火をつけろ! <アニメ映画ベストテン受付中> 毎年恒例のワッシュさんのランキングに参加させていただきたく存じます。 さて、アニメ映画。ぼくは映画オタクであると同時に、アニメオタクでもある、と…
レンタルDVDにて鑑賞。 父親の死をきっかけに集まった離れて暮らしている家族たち。しかしながら、久々に会ったはいいが普段から抱えていた不満が爆発し、家族に隠された秘密が次々と暴露されていく。その意味でこれは確かにブラックコメディなのかもしれな…
10/26@よしもと南の島パニパニシネマ 地味だが手堅い演出を堪能。普遍的な争いの発生する過程を描いている。良作。 真心ブラザーズの「人間はもう終わりだ!」という曲の歌詞に「平和なんか一人のバカがぶっ壊す」っていうのがあって、この映画もまさに、大…
レンタルDVDにて鑑賞。 人の一生は、ロングショットで観れば喜劇、クローズアップで観れば悲劇、を地で行くような構成。この映画を観て、確かに僕は笑った。でもそれは、もうどうしたらいいかわからない力ない笑いだった。傑作。「感情、考え方、ユーモア、…
レンタルDVDで鑑賞。2013年に放映されていたアニメ『たまこまーけっと』の劇場版。 『たまこまーけっと』は最初しゃべる鳥が出てきたとき「こういう話なの?」とちょっと面喰ったけれど、次第に、この日常と非日常を行き来する感じがいいなと思い始めた。そ…
アンティゴネはまだ普通な印象を受けたけれど、オイディプス王はすごい。ばかみたいな言い方になるけれども、お勉強としてではなく今読んでも十分面白い。 ギリシア悲劇として名高い作品だけど、悲劇がなぜ悲劇かって言うと、物語が始まった時点、あるいは、…
村上龍はあまり好きな作家ではない(考え方が相いれない)のだけれども、やっぱり小説家としての腕は認めざるを得ないというか、読みやすくてかっこいい文章を書いてくれるなあと思う。 この小説を読んで、ふとU多丸が『渇き。』評の時に、90年代っぽいと言…
2014/10/6@ミハマ7プレックス クリント・イーストウッドの新作は、アメリカの伝説的なポップグループ・フォーシーズンズをテーマにしたミュージカルの映画化。 80歳を超えて、未だに新しいジャンルに挑戦するイーストウッドには本当に尊敬の念しかない。…
DVDで鑑賞。 ストーリー性が強い作品ではなく、役者に華もないので若干退屈ではあるが、いくつかのショット、そしてラストにはかなり打ちのめされた。 最近のアメリカ映画での核の扱いの安易さには辟易するけれども、この映画が撮られた1984年においてはまだ…
DVDにて鑑賞。 名作の誉れ高い作品なので構えてみたら、とんでもなくパンクでアナーキーな映画だと思った。格調高いところはほとんどなく、この映画から教訓らしいものを受け取ることは難しい。未だに「なんだったんだあれは?」という心境。 はっきり言って…
これは久しぶりにオールタイムベスト審議委員会にかける案件が出てきたと思った! うまくはない。それも込みで作っている可能性もあるが、技術は高くない。が、画面に映るものすべてが狂ってて面白いし、間違いなく好きだ。 それで思った。対象があれだけ常…
レンタルDVDにて鑑賞。 最近の映画で人間から異獣へ変化するシーンをとる際には、CGの変化もあるのかリアリティを重視した結果なのかは知らないがさらっと描くようになった。だが、この映画が公開された80年代はVFXの技術を見せるためかなり尺がとられている…
レンタルDVDにて鑑賞。 ボロボロ泣いた。年間ベスト級。丁寧な演出が刺さる。 両親の離婚の狭間にいる女の子メイジーを演じるオナタ・アプリールちゃんは、撮影当時6歳で、やせ型の体躯に不釣り合いなほど大きな目をしている。監督自身も彼女なくしてこの映…