スピッツ「名前つけてやる」
二発目はスピッツ。スピッツの特徴は、あの音数の少ない演奏だと思う。だからこそ感情移入して思いをゆだねやすいし、その上に草野さんの透明な声と一体になって、聴き手の感情を増幅させるのだ。だから誰かを好きになったときにはスピッツを聴きたくなる。逆に失恋したときはまったく聴けなくなるんだけど。
今作では詩の面で最も変態度が高いかなという気がする。誤解を恐れないでいうと、スピッツの表現欲求って言うのは出発点において結局は銀杏BOYZと変わらない、もてない男の妄想だ。ただ、スピッツはそれをあえて美しい表現で描いている。銀杏についてはまた後で。
アレンジは全体的にアコースティックより。メロディも全体的にメジャーコードの明るめなものが多いんだけど、そんな中でマイナーコード主体のM-6「プール」が入っていたり、ハードでゆがんだギターのM-8「待ち合わせ」が入っていたりして、飽きさせないつくりになっている。個人的にはこの「待ち合わせ」とM-9「あわ」の間が、ホントは曲調がガラリと変わるので違和感が残るはず何だけど、それが不思議と心に残るのが好きだ。
「しっかりなんてできないけど 僕はここにいた」(草野マサムネ詩「あわ」)
「あわ」の引きこもり感溢れる歌詞とか、M-4「鈴虫を飼う」の穏やかだけどどこか生活観溢れる感じも好きなんだけど、一番好きなのは最後の二曲の流れだったりする。
M-10「恋のうた」のレゲエっぽくて全然ストレートじゃないアレンジをあえてこの直球のラブソングにぶつけてきて、それが逆に曲のストレートさを増して聴こえるという奇跡のような歌。M-11「魔女旅に出る」は、イントロからどこか幻想性漂っていて、中盤以降からのホーンやブラスが重なってくる旅立ちのナンバー。二番のところで入るコーラスが個人的には大好きだ。大切な人との別れを明るく描くスピッツの歌は輝いている。それは理想だからなのかもしれない。だから、理想敗れたときは眩しすぎて少し聴けなくなったりするのだ。
「君と出会えたことを僕ずっと大事にしたいから 僕がこの世に生まれてきたわけにしたいから」(草野マサムネ詩「恋のうた」)
- アーティスト: スピッツ,草野正宗
- 出版社/メーカー: ユニバーサルJ
- 発売日: 2002/10/16
- メディア: CD
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