OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

永野のりこ「土田くんてアレですね!」

初めて読んだ永野作品で、高2のときでした。
オタクの女王・永野のりこが1997年に発表した中編集。永野マンガといえば、眼鏡でマッドサイエンティストでストーカーの男の子が女の子をいじめるというのが定石なんだけれど、この作品は少し違います。
まず、表題作について。ストーリーは、眼鏡でオタクで変態の土田君の同僚の篠原さんに結婚を申し込む。篠原さんは過去エロ本のモデルをしていたことがあって、土田君もソレを愛用していた。うまくいかないと思われたプロポーズもあっさりOKに。果たして二人の結婚生活はどうなる?という感じです。この漫画の主題は、現実で居場所を失った女の子がいかにして堕ちてまた普通(?)の幸せを手に入れるかというところにあります。それと、土田君のゆがんだ純愛も一読の価値があります。ダメな人は完全にダメだろうけど。
「さかなちゃん」に関しては、あえてストーリーは説明しません。確かに永野マンガの定石にのっとっているのかもしれないけれど、この作品では永野氏のSFに対する愛、リリカルさ、そして母性愛がうまく重なって、最高の愛の漫画になっています。いや、ほめすぎかもしれないけど、本当にそれ以外に言葉が見つからない。
最後の短編は発表時期が他のより少し古く、1985年ごろ。「さよなら三月ウサギの野原」。萩尾望都の「三月ウサギが集団で」から拝借したようなこのタイトルを持つ短編は、永野作品には珍しく悲しいエンディング。切ないけれど、別れを経験したことがある人なら必ず感じるものがあるはずです。
一般的に永野のりこの最高傑作は「電波オデッセイ」か「GOD SAVE THE すげこまくん」になるかもしれないけど、僕はこれを推します。
最後に、単行本の冒頭にも書いてあるけれど、本当に読みすぎには注意を。