OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

JITTERIN’JINN 「8-9-10!」

 ジッタリンジンがデビュー10周年を記念して1999年に出したベストアルバム。
 ジッタリンジンといえば、Whiteberryもカバーした「夏祭り」が有名だと思うんですけど、これ、本当に日本の歌謡史に刻まれるくらいの名曲だと思うんですよ。昔の歌謡曲っぽいなと思うけど、どこがどうなのか指摘できない。何かに似ているような気がするけど、うまく指摘できない。昔の曲のような印象がするけど、いつ頃の昔だと指摘できない。ここではたと気が付く。ああそうか。この曲は童謡に似ているんだ。子供のころ聞いて飽きるまで歌っていた童謡に似ている。好きな人といっしょに過ごせたけれど素直になれなかった夏祭りの思い出が、たとえ体験していなくてもフラッシュバックするような、名曲だと思います。ボーカルの春川さんの声はまっすぐで、変声期前の少年のような声です。この声で歌われる「僕」はたまらないでしょう。あと、線香花火のようなドラムが素敵です。
 もうひとつの代表曲は、タカアンドトシが漫才でも使った「プレゼント」です。スカコアの走りともいえる音楽で、高速の裏打ちギターに乗せて別れた彼氏からもらったものをひとつひとつ思い出すという内容なんですけど、やっぱりはすっぱな春川さんのボーカルがよいです。スカスカな演奏もいいですね。
 世間一般ではこの二曲が代表曲で認知されていると思うんですけど、このアルバムを聞けばジッタリンジンが10年間自分の音楽性を信じて、春川さんのボーカルのごとくまっすぐに進んでいったことがわかります。それは、誰にでもできるような簡単な演奏で、純粋にいい曲を歌うということです。特に、最後の二曲、「クローバー」と「サツキマスの歌」にそれが現れている気がします。
 春川さんのボーカルは、前述のとおり少年性にあふれた声で、故郷への望郷を歌うのにすごく適した声だと思います。「クローバー」は、離れていった幼馴染に対する想いを歌った歌で、アコーディオンと子供のボーカルで入るイントロから、春を感じさせる曲になっています。あと、ベースがすごいかっこいい。
サツキマスの歌」は最初聞いたとき本当に童謡か、どこかの国の民謡だと思いました。クレジットの作詞・作曲破矢ジンタを見たときが驚きでしたね。リフを奏でるギターと、ウッドベースマンドリン、トライアングルという、非常に少ない音数での演奏にのる、日本人なら必ず切なくなるだろうって位のメロディ。これは隠れた名曲、世代を超えて歌い継がれなければならない名曲だと思います。歌詞は、サツキマスが産まれた川を旅立って、成魚になって帰ってくるという内容なのですが、きっと生まれ育った町を出て行って自立して帰ってきた人たちを描いているのだと思います。そういった内容を童謡風にするのはさすがです。

8-9-10! Jitterin' Jinn Best

8-9-10! Jitterin' Jinn Best