OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

ヤプーズ「大天使のように」

 女優でもある戸川純率いるニューウェイブバンド・ヤプーズが1988年に出したセカンドアルバム。ジャケットからも感じられるけど、全体的にどことなく昭和的な暗さが漂う名盤です。
 完全に私観でいえば、ソロで出したアルバムよりもヤプーズ名義で出したアルバムのほうが今聞いても通用する気がする。いや、厳密に言えば確かにサウンドとか歌詞とか、古くなっている感じはするんだけど、それも含めて今聞いても十分発見があると思う。僕が初めて聞いたのは高校2年生のときで、タイトルからも明らかな「棒状の罪」のエロさや、インドの街を題材にした「祈りの街」の悠久さや、感想のカノンが美しい「森に棲む」の美しさ、別れのシーンを歌った「大天使のように」の軽いうつに惹かれたのだと思う。また、全体を通してある情報量の多さあるいは文学性に。
 あと、最初にも述べたが暗いんだよね。このアルバム。だけど、不思議とうつの時に聞くと癒されるような、そんな感じがする。それこそ「シュトルム・ウント・ドランク 怖がらないわ ハハハ・・・」(「憤怒の大河」より)ってな感じで。それと、全体を通して無国籍な感じがする。先述の「祈りの街」はもちろん、「去る四月の二十六日」の中華風(それも民族的な感じ)とか。あとは、エスニックミュージックからパンク、クラシック、エレクトロニックまでを飲み込む懐の広さとか、それらをきちんと歌い分けて、なおかつ感情の吐露さえも感じさせる戸川純の歌唱力とか、かなり魅力の多いアルバムです。暗いのが大丈夫な人は聞いてみたらいいと思います。
 あと、多分ヤプーズのころの戸川純って微妙に前の時代の人になりつつあったと思う。昔のロッキンオンに載ってたヤプーズのアルバムのレビューを見る限りでは。でも、個人的にはこっちのほうが戸川純が好き勝手やってるというか、バンドメンバーだからこそ生まれる良さみたいなのが見えてよいです。もしかするとこの傾向、東京事変とか100sにも見られるのかも。

大天使のように

大天使のように