OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

aiko「夏服」

 2001年リリースのaikoのサードアルバム。個人的にはaiko作品の中で一番完成度の高い作品だと思っている。全体的に初夏を思い起こさせる流れに、バラエティに富んだ曲たちが乗っていて、統一感が出ている。
 aikoの作風のひとつは少女性だ。初期のaikoっていうのは「女学生」なんていう時代錯誤な言葉が思い浮かぶくらい、時代遅れな感じがした。完全に田舎ってわけじゃないんだけど、都会とは呼べない、そんな町の高校に通う、校則違反もしていない女学生。そんなガーリー=少女性路線の完成形といえるのが「アスパラ」だ。その前の先行シングル「初恋」もいいけど、こっちのほうがaikoの真骨頂ではないか。この曲のサビ、微妙に変でしょ。伸びのあるメロディで「アーイスは溶ーぉけーてー ただぁーまずいーだけー」と歌ったかと思うと、中音域くらいで半音進行で「あーたしの心もおいしくないわ」って歌う。これは天才か変態の仕業だよ。この変なファンキーさっで、「一時の廊下」「思いだすなあ(古文の詠嘆の訳を連想させる)」など学園モノキーワードが出てくる歌詞が乗って。この世界観にはまったら抜け出せない。
 そのほかにも夏の青空の寂しさを表したようなトラックやメロディの「飛行機」、聞いてて楽しいけど、どっかオンナの怖さを感じさせる「ロージー」、切ない「密かなさよならの仕方」、ソウル風で、秋の物悲しさも感じさせる「September」、イントロから雨を感じさせるアレンジ、どっかはねたサビが逆に思いの強さを感じさせる「雨踏みオーバーオール」など、名曲は多い、ってか捨て曲なし、日本人で聴かないのは損だ。聴け。
 aikoの作品で一番ニューミュージックに近いのはこれかなあと思う。その後ガーリー路線に一段落つけたaikoは「秋、そばにいるよ」で落ち着いた作風のアルバムを出し、「暁のラブレター」でかなり円熟味を増した。シングル「三国駅」なんて少女時代を完全に過去の物として回想する曲だし(名曲だが)。よく考えれば今年で30か。多分、もう自分で歌う曲でガーリー路線はないんだろうなと思う。今の作風も好きだし、聞き続けるけどね。

夏服

夏服