OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

荒井由実「ひこうき雲」

 日本を代表するシンガーソングライター荒井由実が1973年にリリースしたファーストアルバム。全体的に薄味な感じがするけど、聴いていると高校の頃の自分と今の自分とのギャップが感じられて、その差に不思議ながらも感動を引き起こすような気がす。
 荒井由実松任谷由実)は中島みゆきを少しだけライヴァル視していたらしく、「あの人(中島みゆき)は私が乾かした洗濯物をずぶ濡れにしてしまう」と語っていたらしい。身近なところで、スピッツミスチルに重ねるとスピッツのほうがユーミンに近くて、ミスチルがみゆきという気はする。もっとも、これはかなり乱暴なわけかただし、僕はスピッツミスチルではスピッツが好きで、ユーミンとみゆきではみゆきが好きなんだけども。
 「ひこうき雲」は後世まで歌い継がれるべき名曲だ。この前、なんかの番組で最近の歌手が夕暮れをバックにこの曲を歌っているのを聴いたけど、僕が思うに、この曲のイメージとしては真っ青な青空だ。歌詞の解釈はいろいろあるだろうけど、もし自殺した友人にささげた歌とするならば、これ以上に最適な表現方法は内容に思えるな。押し付けがましくないアレンジとか、歌唱法とか。たとえば、大学時代の友人や社会人になっての友人の自殺の歌だったらこうはならない気がする。高校時代ってのは、将来がやっぱりふわふわしているわけで、年をとるにつれて将来はそれこそ現実味を帯びてくる。将来が安定していない人にも時の流れは残酷に襲い来る。つまり、結局は高校生の頃に戻ることはできないってこと。この歌は、そんなふわふわした時期である高校生の頃だからこそ現実味を持たない死が少し甘美に響いてくる。こんな歌、たぶんほかにない。(歌以外だったら大島弓子の漫画とか、三田誠広の「いちご同盟」とかあるけれど)
 今、青春ソングの役目って完全にパンクやギターポップに担われている。この頃みたいにニューミュージック(J-POP)が担うことはないのかもしれないけど、一種少女漫画的な世界観を再現するのにはJ-POPが最適だと思うだけに、今だからこそそんな歌が出てきてほしい。
 

ひこうき雲

ひこうき雲