THE JESUS AND MARY CHAIN「PSYCHO CANDY」（1985）

　イギリス出身のロックバンド、ジーザス・アンド・メリーチェイン（以下ジザメリ）のデビューアルバム。1985年発表。
　たとえばさ、今やハードコアを通過した世代にとってエルヴィス・プレスリーやビートルズやセックス・ピストルズの音を、少なくとも音楽的にはうるさいと感じる人はいない。けど、彼らの初期の音は今聴いても不思議と「うるささ」を感じてしまう。それは、若さゆえの暴走ってかそんな感じのもの。
　もはや、エルヴィスやビートルズを聴いてきた大人が彼らの音楽を教科書にまで載せる世代になって、若者たちはもっとうるさい音を求めるようになった。そしてそれはノイズミュージックやハードコアとして一般のリスナーからすこし離れたところに置かれることとなった。
　けど、ジザメリはそういった離れたところに置かれた音楽を、先人たちの方法論でまた普通のリスナーたちに復権しようとした。きっと方法論というほど何も考えないで、ただ若さのままに歌を作って演奏したらそうなっただけかもしれないけど。とにかく甘いメロディと、ギターのノイズがかかっているんだけれども不思議と癒されるような音、けど激しさを感じてしまう全体の構成。きっとそれは演奏力が達してはいないのだけれど、その演奏をはみ出してしまうほどの意欲にあるのだと思う。雰囲気はどっか閉塞を感じるのだけれど、それも80年代の空気という感じがして、おそらくこの閉塞感が今に通づるところあるから80年代・ニュー・ウェイブリバイバルブームなのかなという気がする。もっとも、この閉塞感はきっとどの時代の青年も抱えているものなのだろうけど。

サイコ・キャンディ