OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

山崎まさよし「アトリエ」(2003)

 まさやん2003年発表の5thアルバム。30代になって初めてのアルバム。なんと、作詞作曲編曲プロデュースどころか、すべての楽器演奏までも担当した、けれど全体としてはバンドサウンドになっているアルバム。この人の才能に触れるとため息が出る。 
 山崎まさよしといえば、アコギを持って歌番組に出て、即興で歌を作っている姿を思い浮かべる人もいるかもしれない。これは「センスオブナンセンス」*1のころからやってたりするんだけれど、こういう人が音楽家というのだろう。彼なら、何でも歌にしてしまえるみたいな。
 このアルバムも、内容はソウル、フォーク、ブルースと豊富なんだけれど、それよりも歌っている内容が、望郷の「僕と不良と校庭で」、日本的な雰囲気の避暑「神様も知らない午後」、エロスの「レイトショーへようこそ」、少し煩悶の表現が見られる「オモイスゴシ」、夏の風景の「最後の海」、音数の少ないラブソング「全部、君だった」などと、多岐にわたっている。
「アトリエ」はまるで、山崎まさよしという文豪がペンをギターと声に変えてつづった13本の掌編集のような印象を受ける。リズミカルに刻む「急」も、爪弾いて聞かせる「緩」も弾き分けるギターの腕は確かだし、ボーカルも、あのかなりためて歌う感じは好き嫌い分かれるだろうけど、お腹から息をおくり額で響かせる発声法ははっきり言って「うまい」の一言。
 きっとまさやんは十年後も二十年後も変わらないスタンスで活動し続けている。もうひとり、スガシカオさんとかも同じように活動していきそうだけど、こういった活動の仕方って小田和正さんとか井上陽水さんに通じる。彼らも、最先端の音楽性を追求するのではなく、ひたすら楽曲のクオリティをあげていった人だから。
 今から30年後にもきっとまさやんやシカオを聴いてるだろう。そして、そのころの二人の曲はどうなってるのか、今の僕には想像もつかないが、きっと受け入れられるだろう。

アトリエ

アトリエ

*1:スペースシャワーTVで1996年から1998年にかけて放映された、フラワーカンパニーズがMCを勤めていた番組。まさやんはこのなかの「侵入部員山崎くん」というコーナーでテーマを与えられて即興で歌を作るというコーナーをやっていた。ちなみにthee michelle gun elephantのチバもレコードを紹介するコーナーをやっていた