OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

筋肉少女帯「レティクル座妄想」(1994)

 宇宙人上等!(何のことか分からない方ははてなキーワードはてな伝説」をお読み下さい。)
 大槻ケンヂ率いるミクスチャーバンド・筋肉少女帯の1994年発表のアルバム。エッセイなんかを読んでみると、オーケンはこの頃多少精神の調子を崩していたらしい。詳しくは「オーケンののほほん日記 (新潮文庫)」参照。それで後に医者から宇宙人趣味を控えるように言われたりするんだけど。
 さて、このアルバムはそんなこともあってか、全体的に暗く重いムード、いや、筋少の作品はその性質上暗くなる事が多いんだけど、この暗さは筋少史上髄一と思われる。NIRVANAでいえば「IN UETERO」、RADIOHEADでいえば「OK COMPUTER」、MANIC STREET PREACHERSでいえば「THE HOLY BIBLE」といった感じ。音楽性的には、完全にHR/HMに絞っている。中には演奏はバキバキのヘヴィメタなのに、アホアホなメロディと、少女のカリスマミュージシャンに持つ幻想を皮肉った歌詞がのった「ノゾミのなくならない世界」なんて曲もあるけど。
レティクル座妄想」とは、宇宙人にさらわれたと供述する人がよく挙げる星の名前からとったらしい。大槻ケンヂって僕にとってはエッセイのイメージが強くて、筋少は確かにコミックバンド然しているように思う方もいるかもしれないけど、そのイメージを結果的につける事となった大槻ケンヂの歌詞はSF、ホラー、青春映画からはじまってオカルト系書物、トンデモ本、文学作品、猟奇物まで飛び、果てはお笑いや漫画まで引用元が及ぶ思想のミクスチャーと言えるものだ。そしてメッセージは、今作に関しては亡くなった少女を取り巻く3人の女の子(ノゾミ・カナエ・タマエ)のストーリーを軸に、やはり一貫して描き続けている、はずれものが世界を否定した際に生まれる破壊願望だ。個人的にはかなり好きなテーマです。惜しむらくは大槻ケンヂのボーカル、下がり気味のピッチと芯のないボーカルは、もっと表現力さえつければ最高の作品になるのにと、残念さを隠せない。せめてポエトリーリーディングの部分はもっと演技を見せて欲しかった。まあ、それもオーケンらしいっちゃオーケンらしいか。

レティクル座妄想

レティクル座妄想