OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

滝本竜彦「ネガティヴ・ハッピー・チェインソー・エッジ」

 ひきこもり出身の作家、滝本竜彦のデビュー作。
 経歴を見るに、この方がひきこもりをしていた時期ってのは1999年前後ってことになる。まだネットもそれほど普及してなかった時代に、彼が自分のアイデンティティを求めたのは何だったのだろう?多分今ひきこもりをしている人が作家になったらまったく違う作品を書くのだろう。今はひきこもりをしていても青春を過ごせる時代だ。ゲームオンラインとかで。それが本来の形とは少々違っていようとも、一種の青春たりえるものなのだと思う。けど、滝本さんはおそらく自分の世界と向き合い、青春を棒に振ったという自覚とともに過ごす必要があったのだろう。
 そんな邪推とは裏腹に、この作品は正面から青春している。ツンデレキャラ、雪崎絵里の存在とか、ライトノベルのように読みやすい文体とかから見ると、この作家がネット世代より少し先行するゲーム世代の作家なんだということがわかる。このへん、白岩玄と共通するところかも。
 この作品は後半に、主人公のモノローグ、死への対峙、つまらない日常の閉塞への拮抗なんかがページを覆う。文学表現としては失敗かもしれないけど、これぐらいぶっ壊れたほうが真情の吐露としての文学になるのかもしれない。けど、この作家は文章よりも漫画や映像のほうが表現としてはあっている気がしたのも事実。
 自嘲ぐあいと、軽さと、青春要素が絡み合って気楽に読める作品だと思う。青春の持っている風景が、銀杏BOYZミネタや、千原兄弟松本大洋なんかと共通する気がした。空気感としては今のほうがあってるかも。

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)