OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

男はつらいよ 柴又純情

1972年公開。監督・脚本:山田洋次。出演:渥美清倍賞千恵子吉永小百合(マドンナ役)、前田吟松村達雄、三浦千恵子、太宰久雄(←タコ社長ね)、佐藤蛾次郎
 「めし」のときに行った名画座で観てきました。さて、少しきびしいこと書くかもしれません。
 これ観る前に、みうらじゅんさんの書いたエッセイを読んでて、それで内容が「寅さんとは友達になりたくない」っていう内容だったからそれに影響されすぎたのがいけなかったのか、やはり、あまり寅さんには共感できませんでした。寅さんになって映画館から出て来れるかなあとも思ったのですが、ダメでした。
 まあ、あまり両津勘吉にも共感できない人間なんで、僕自身の江戸っ子的要素はあまり高くないのかもしれません。そりゃ、人情モノは好きだし、いざっていうときにはケチケチせずパーッとお金を使うこと、相手の幸せを考え身を引くことは大切なんでしょうが、怒りで我を失ったときの周りの人のことを考えてない発言とか、本気で腹が立ちました。
 あと、自分がマドンナの歌子(吉永小百合)にお似合いだって、自分から言わず周りの人に言わせる場面とか、自分の汚いところを見せられているような気分になりました。それをやる人物よりも「よし、決めた!俺はあの娘をおとすぞ」と周りに宣言してから口説きにかかるプレイボーイの方が信頼できる気がしますし。ただ、実際自分が恋をしたら寅さんパターンでしょうね。たぶん、寅さんっていうのは日本男子の恋愛に関しては奥手な面を純粋培養した上で、まともな暮らしをしていないっていう普段の生活から離れた、一種のピカレスクみたいになっていて、それが人気の秘密なのかなと言う気はします。
 思ったのが、この映画ってすごくイヤーな沈黙がありますよね。寅さんがさくらの言った「つい地が出る」っていうのを「痔」と聞き違えたときとか。そういった沈黙はさくらたちが歌子の結婚話について話しているときなんかにも発生しています。それで、なんかこの話をもし恋愛話と見た場合、寅さんって完全に蚊帳の外でも賑やかしとしてしか機能していないんです。それが、なんか解せなくて。
 これが「男はつらいよ」のパターンと言われればそれまで、「それを言っちゃあ、おしめえよ」なんですけどね。
 あと、正直言って演出が変化に乏しくて飽きました。渥美清松村達雄さんの演技は結構引きこまれました。それと、吉永小百合さんがあまり魅力的に写らなかったのは残念でした。今人気の伊東美咲仲間由紀恵も30年後にはそう写るのかな。
 ただ、思うのですが、伊東美咲は「釣りバカ日誌」に出演していましたが、少し時代遅れのような服装でした。多分、寅さん像も30年前にも既に「古き良き日本の江戸っ子」なんてとらえ方をされてたんじゃないかと思います。そして、ヒロインも否応無くそれに会わせたような女性像を演じることになる。ポスターと予告しか見ていませんが、「釣りバカ日誌」の伊東美咲さんも他の作品に比べあまり魅力的には見えませんからね。それに、2006年現在において「釣りバカ日誌」もサラリーマンご用達の一昔前の話みたいなジャンルに捉えられてますし。そう考えると、吉永小百合の本質はこの映画からはわからなかったのかもしれません。
61/100

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