ジョージ朝倉「恋文日和」
ジョージ朝倉さんの連作短編集。映画化もされているけど・・・。
世の中には「短編の名手」と呼ばれている人がたくさんいます。たとえば、藤子・F・不二雄さんだったり萩尾望都さんだったり、小説で言えば星新一さんや筒井康孝さんもそうですね。短編というのは、いわゆるワンアイディアを試すのにはもってこいの場で、そういった発想力でもって「短編の名手」と呼ばれている人は多いです。
ただ、漫画や小説など、ストーリーには種類があるように、「短編」にも種類があります。
恋愛について書いた短編で「名手」と呼ばれる方は残念ながらほかのジャンルに比べて多くありません。これは恋愛をストーリーで描く際に、短いページで切り取るということが難しいのが大きいです。しかるに、恋愛をメインで描いた短編は少なくなります。
そのような状況ですが、言わせてもらいますと、ジョージ朝倉さんは「短編の名手」だと思います。しかも、中心に「恋愛」を据えた短編の。
ジョージ朝倉さんはけして絵で見せるタイプではありません。ただ、女性キャラはどことなく手塚治虫さんの描くサファイアやロックあたりを連想させます。それと、決してうまいとはいえない絵のはずなのに、「あたしの知らないキミへ」のラストシーンで空一面に広がる手紙はすばらしかったです。「雪に咲く花」のラストの、少し怖さを含んだ絵も美しいです。おそらく映画化した監督もそれらの美しさを表現しようと思ったのでしょうが、少し安っぽく映ってしまったのが残念でした。
そして、この「恋文日和」は、手紙を中心に始まる恋愛を描いた作品です。メール全盛の時代だからこそ「手紙」というものが映えるというのはありますね。といってもメールを取りあつかった作品も、中にはあるんですが。
どの作品も、終わり方の後味のよさが良いです。ボー●ズビーとはえらい違いです。この、ジョージ朝倉さんという方はもともとギャグ漫画のほうも得意な方だったりするのですが、笑いを知っている方は間の取り方がうまくて、したがって泣かせるのもうまいのかなと思いました。
78/100 だんだん手紙というのがあまり重要でなくなってきた気がしたのがマイナス
- 作者: ジョージ朝倉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/03/09
- メディア: コミック
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