OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

小沢健二「犬は吠えるがキャラバンは進む」

 オザケンのアルバム、とうとう出るらしいですね。全曲インストとのことですが、どういう音楽性なのか、まったく見当がつかないだけに楽しみというのはあります。購入に関しては保留ですが。ちなみにオザケンのインストって、「いちょう並木のセレナーデ(リプライズ)」とあとは「球体が奏でる音楽」に収められたジャズナンバーくらいだったから、もしかしたらそこから方向を変えてエレクトロニカや音響にいくかもしれないと思うのですが。
 さて、このアルバムはそんな小沢健二のソロデビューアルバムです。僕が持っているのは1993年に発売されたバージョンで、これは現在は廃盤になって「dogs」というタイトルで再販されているようです。
 一般的には、ソウルミュージックを消化したアルバムと言われているのですが、実は正直どの辺がソウルなのかはわからなかったです。初めて聴いた高2のときにそんなにソウルを聞いていなかったってのもあるのですが、実際に現在でもこれはソウル作品ではないと思います。定義によりますけどね。
 ソウルを聴く際に着目されるのは声、それに歌唱法です。小沢健二の声は甘い声だとは思いますが、声が細いため存在感という意味では本場のソウルシンガーのそれに劣ります。
 ただ、小沢健二が魅力のないボーカリストかというと、それは否です。小沢健二テノールの声で丁寧に発語しています。自分の紡いだ歌詞を、歌う際においても「紡ぐ」という行為を忘れていないかのように。だから、小沢健二の歌詞は響きます。
 歌詞について、どこかのネットの言説で、自己啓発的だというのを目にしたことがあって、それも言いえて妙だとは思います。フリッパーズギターの頃から、シニカルな印象はあったんですけど、どこかジョークっぽい、100%の絶望なんてない、みたいな印象を。ただ、このアルバムと次回作からは100%の希望を感じるんです。少なくとも、歌詞からは。ただ、100%の希望の裏にはそれに近いくらいの絶望があるわけで。
 小沢健二本人が書いたライナーノーツがあるわけですが、これに「明けない朝はないし、もし朝がきてそれが少しまぶしすぎて、そしてその日一日眠ることが許されるならぐっすり眠って、夕方には出かければいい」という意味の文章があります。これを読んだとき、小沢健二にも眠れない夜はあったのかなと思ったわけです。
 「LIFE」は東京という街並を等身大(計算されてはいますが)で描いた印象があるのに対し、これはどっか遠い異国の地をイメージして作られたのかなという気がします。どっか土臭い印象を受けるアレンジも、現実逃避には最適だったりします。
79/100

犬は吠えるがキャラバンは進む

犬は吠えるがキャラバンは進む