OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

森博嗣「数奇にして模型」

 森博嗣描く「S&Mシリーズ」の第7作目。模型展示会場と工科大学の研究室で殺人が起こって、模型展示会場のほうで倒れていた男が真っ先に疑われたが…、という事件を犀川創介と西之園萌絵のコンビが解決するというものです。なんだろ、これ。まず、タイトルの付け方は相変わらず見事。萌絵は卒業論文を書き始めている。個人的には、犀川は今回はいつもに比べさえていない気がした、なんていったら「僕はいつもこんなものだよ」なんて言うだろうか?
 それで、着眼点というか、この話の中心にあるのは推理でも動機でもなく、人間、あるいはそれを超えた自然法則みたいなもの。きっとこの犯人は死刑か無期懲役になると思う。それぐらい、普通のミステリーを読みなれた僕には同情に値しない犯人像。だけど、それを作り出したのは何なのか、そういったものを糾弾とかそういった私的な感情を入れずにただ分析していく犀川、というより作者の視点には凍りつくようなものを感じる。けど、一方で萌絵の感情描写や風景描写にはロマンチシズムもあるし。
72/100

数奇にして模型 (講談社文庫)

数奇にして模型 (講談社文庫)