OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

岡崎京子「リバーズエッジ」

 とりあえず、どうしても2月に取り上げたかった作品です。岡崎京子がその文学性と同時代性を発揮した作品で、初出は「CUTIE COMIC」という、現在は廃刊してしまった雑誌で1993年3月号〜1994年4月号で連載していたもの。この「CUTIE」って雑誌、吉川ひなのがCMしていたのをおぼえているのだけれども、その吉川ひなのをモデルにしたのではないかと思われるキャラクターも出てきます。
 とにかく僕は岡崎さんのストーリーを語る、紡ぐテンポが好きなんです。それはちょうど高校生くらいの擁護された恋愛を語るにはもってこいのスピードです。しっかりしていて、おしゃれで、時々奇抜な友人のアドバイスをもらっているような気になります。
 温度も好きですね。この時期の岡崎さんの絵柄には冬が似合います。あくまでも関東地方の、あったかくして窓の外を見つめているような冬。
 この作品は、岡崎作品のなかでは異色じゃないかなって勝手に思っています。いや、普通のストーリーの概念から見るとこれが一番ストーリーの体をなしているかなという気はします。淡々と語られていくストーリーで、そこには残酷さや閉塞を間違いなく感じられます。これを煽るような演出をしないのは岡崎京子らしいといえばらしいですが、今までと違うのは、岡崎さんにいままであったユーモアを敢えて排除したようなつくりであるということ。
 岡崎さんのユーモアは多くを時事ネタに使用します。曰く「仮面ノリダーと結婚したい」。それゆえに、岡崎さんの作品は時がたつにつれて風化していく側面があります。そして、おそらく最初で最後の80年代ブームが来て、もしかしたら80年代という趣の中で岡崎京子を読んだ人もいるかもしれません。事実、80年代の空気を一番よく伝えているのは、「東京ガールズブラボー」か、中森明夫の「東京トンガリキッズ」だと思います。
 しかし、岡崎さんの持つセンス、それはユーモアだったり、ストーリー構成、デザインなどを総合したものと見ても、それは時代を超えて受け継がれるものはかなりあります。
 この「リバーズエッジ」という作品は、この中で時代を越えて受け継がれやすい、デザインとストーリーに重点が置かれています。ゆえに、漫画好きなら一度は読んでおくべき名作になっています。けれど、高校時代に岡崎京子を読みまくった人間としていっておきたいのは、ここで止まらないでほしい、ということです。岡崎作品の魅力は「おしゃべり」なんで。
 ストーリーについては敢えて語らないでおこうと思います。有名なギブスンの詩の引用も、ぜひ自分の目で見てほしいです。
 その作品で切り取られた「90年代中盤の郊外の閉塞感」。それは、それまで異質なものとされていたものが何の感動も見られなくなったということに象徴されているのかもしれません。そして、「リリイ・シュシュのすべて」に続きます。
78/100

リバーズ・エッジ (Wonderland comics)

リバーズ・エッジ (Wonderland comics)