OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

椎名林檎「加爾器 精液 栗ノ花」

 椎名林檎が2003年にリリースした3枚目のアルバム。
 椎名林檎のイメージに沿った作だとは思うけれど、曲名が6曲目「茎」を境にシンメトリーになってたり、曲の雰囲気が大正のころに設定されていたりと面白い。
 結局ぼくは椎名林檎のユーモアのセンスが好きなんだと思う。このアルバムは今まで以上にBGM志向が強まった(とは言ってもそこかしこに林檎的主張がみられるが)のだろう。ストリングスの使い方が映画音楽のようだし、「おこのみで」や「ポルターガイスト」のような声が主役のナンバーでも椎名林檎印の巻き舌などは見られず、あくまでBGMに徹している印象。それらは、椎名林檎の音楽自体がBGMを演じているような印象がして、けど微妙に椎名林檎の陰を小出しにしていて、その陰の出し方がユーモアのセンス。 
 椎名林檎作品の中でははっきりとした心情吐露が見られないのもこの作品の特徴であるとは思う。かつて椎名林檎が愛用していた「あたし」という一人称がなくなり「僕」が使われるようになっている。これが、この作品は全体を通して演じているという印象を示すひとつの証拠だ。詩に関していえば前は必ずあったロック関連のキーワードも消滅している。
 で、一番好きな曲がラストの「葬列」である。シタールのような演奏から始まり。間奏ではオルガンのみになったり、このオルガンが一最後のサビの部分に入る前に一度止んで途中から入ってくる場面は、よくこんなアレンジ考え付いたなと思う。変態だ。ラストのすべての音が轟音で押し寄せ途中で終わる感じがよい。
90/100

加爾基 精液 栗ノ花 (CCCD)

加爾基 精液 栗ノ花 (CCCD)