OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

滝本竜彦「NHKにようこそ!」

 引きこもり界のトップランナー滝本竜彦氏の2冊目の小説で、漫画も大ヒットしている。滝本さんはこれ以降小説をあまり精力的には出していないらしく、残念ではあるのだけれど。
 内容は、今から4年前のはてなダイアリーも無かった時期に出されたとは思えないくらい時代を先取りした内容。「ネガティブハッピー・チェインソーエッジ」のリリカルさは後退しているようには思えたけど、「ネガティブ〜」より文章は上手になっていると思った。ただ、谷川流さんに比べると文章力では劣る気がしないでもないけど、その分文学性みたいなところでは滝本さんに軍配が上がるかな。
 とにかく、中盤に至るまでエロゲーだのドラッグだの宗教だのさまざまな問題を巻き込んであちこちバラバラに進むストーリー展開には目を見張られる。それで、収集がつけられたかっていうと、完全についたわけじゃないんだけど、それでも、「なにをしたいかわかんねーよー」って気持ちにあせる人々、「人に迷惑かけてばっかりなら死んだほうがいい」なんて思う思春期病、そんな人々が宗教以外の方向で救済に向かっていくラストは本当に良かった。あまりスケールの大きさは感じないんだけどね。この辺、大槻ケンヂの「グミ・チョコレート・パイン」にも通ずるものがあるのかもしれないけど。オーケンは27,8歳のとき書けなかったラストを37歳になってやっと書けたんだよなあ。
 だから、もっと滝本さんの小説を読んでみたい。滝本さんのデビューは23歳で、意外なほど若い。もちろんこの年齢だから書けたんだろうけど、30過ぎてこのテーマで書くのも見てみたい。「池袋ウエストゲートパーク」なんて意外にも石田衣良さんが30代半ばのときに書いてたりするからね。
 それと、ぼくはこの主人公佐藤の年齢に差し掛かって、わりとプチひきこもり&ネット廃人気味で身の切られる思いではあるけれど、2枚目の誓約書のシーンは思わず泣きそうになってしまいましたよ。
78/100

NHKにようこそ! (角川文庫)

NHKにようこそ! (角川文庫)