OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

大日本人

 松本人志の第一本目監督映画。批評の批評になってしまいそうだけど感想をば。
 まず、とりあえず日本に生きている人なら松本がどういう人かはわかっているわけで、その時点でこの映画を公平に批評することは不可能になります。多分、批判したと言うフランスの評論家の言い分が映画としてのこの作品としては正しいのだろうな。
 それと、今現在からしばらくは、この映画を肯定することが映画評論家的には難しい、ような状況が続くと思います。キャシャーンとかデビルマンみたいに、CGを多用した作品に日本映画は厳しいですね。
 もちろん名作とは思わないですし、対費用から考えると、失敗作−、となる可能性が高い作品ですが、僕はそんなに嫌いじゃないです。とりあえず、映画を見ていた2時間は楽しめました。ただ、観た後に何も残らない感じがします。
 これは、おそらく期待値が大きすぎたのだと思います。「嫌われ松子の一生」以来の公開が待ち遠しい、楽しみな映画でしたが。
 ここであえて言いましょう。松本人志は最高の芸人だと。
 芸人さんって、面白いことを言うときに自らのハードルを上げないようにしてますよね。ただ、ここまで期待を煽って(てか煽られて)*1、それで結果がどうあれ笑いで勝負したことは十分評価に値すると思います。
 正直に言えば、僕はあまり松本人志の笑いは好きじゃないんですよね。松本人志の笑いって、1.「あれ、こいつおかしいんとちゃうか?」と思わせるような人物を出し、その発言をつらつら続ける。2.事前情報だけで何が起こるんだろうと思わせ、ラストで笑わせる。3.はなからカオスの世界。の3つに分けられると思います。で、これは1に近かったように思うんですよね。3というにはカオスの度合いが足りないように思いますし。
 それと、公開までの情報の煽り方(メディア戦略)事態には2を感じましたけど、それを成立させるにはちょっと大日本人そのもののインパクトが弱すぎたと思います。しかしながら、1の笑いって映画向きじゃないと思うんですよね。この笑いって観客にとって、その人物のおかしさを漠然と感じていながらもどこで笑っていいのかわからず、とりあえず適当な発言で笑っとく、という形式で、まず松本の作品と言う看板ありきですから。
 だから、松本には少なくとも3本の映画をとる義務があると思います。個人的には2の形式の低予算ホラー映画が観たいなと思います。
 それと、この映画が失敗作である要因のひとつに、これ無理言うなと言われること承知なのですが、この映画が終止コメディだったことがあると思うんですよね。映画ってある種の監督にとっては頭の中を映すものになると思います。そう、北野武がそうであったように。
 恐らく多くの人が、笑い以外のもの求めて映画館に行ったと思うんですよね。それこそ松本人志の頭の中を覗き込むように。それが、思った以上に浅かったからがっかりしたんだと思います。だから、残ったもう1本は大阪の鄙びた感じを前面に出した青春モノ!(北野武で言えば「キッズリターン」)

*1:少なくとも内容に関してはハードルを高める発言だったように思う。興行収入用に板尾を用いたのは松本ファンに対する媚だと思うが