OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

天然コケッコー

 くらもちふさこ原作、「ジョゼと虎と魚たち」の渡辺あや脚本、「リンダリンダリンダ」の山下敦弘監督の映画。主演は夏帆
 これは、今年一番の映画だ。とにかく、出演者の演技が自然すぎるのだ。よくぞこんな演技を引き出したなと敬服。
 冒頭は夏帆のナレーションから入るのだが、ちょっとつたない方言が、最初はきになるものの、だんだんこの映画にはこの要素が必要不可欠なのだと思わせてくれる。この映画は安藤政信にとっての「Kids Return」みたいに今後の俳優人生を決定付けるような作品になるんじゃないのか。演技はまだつたないはずなのに、予想外にうまいと思った。というよりも、自然なのだ。相手役の岡田将士の、まだ周りに気が配れていない感じもグッド。
 自然な演技というのではほかに、主人公右田そよ(夏帆)の母親(夏川由衣)が夫の昔の恋人?と思われる人と郵便局ですれ違ったときの話を聞き流す感じの表情が見事。細かい演技では「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の永作博美と並んで今年のナンバーワンタイだ。
 構成は連作短編というような形になっている。
 ひとつすごい好きなシーンがあって、主人公のそよが冬祭りで友達と話をしているときうっかり「うちの村だっさい床屋ばっかりやわ」といってしまい(友達の中に床屋の子供がいる)、そのことの自責の念と友達との関係がすれ違っている悲しさから、蛇踊りを見ながら泣き出してしまうシーン。こんな感情を映像化した監督って山下監督が初めてじゃないのか。きっと監督は相当細やかな感性の持ち主だ。
 美化された世界というのはわかるけれど、だからこそ2時間さわやかな気分にさせてくれる。美しい映画だ。
 そして、この映画に世界観とうまく距離をとりつつ鋭いところをついてくるのが、エンドロールに流れるくるりの「こころは三角、言葉は四角」だ。

天然コケッコー (1) (集英社文庫―コミック版)

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