OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

黄色い涙

 犬童一心監督。「嵐」主演の1963年を舞台にした青春群像もの。
 上記の「フラガール」が主観的に高評価できない映画とするなら、こっちは主観的に高評価したい映画だ。別にぼくは「嵐」のファンでもない。ただ、青春の終わりかけた時期に観たこの作品に、感情移入してしまっただけのことだ。正直、主観的に見れば今年No.1の映画だった。バイト中の休憩時間によく行っていたコンビニにこの映画のポスターがあって、あの陽の差し加減に何か感じるものがあった。
 この作品に見られる美化されたレトロというのは芸術的な意義としては否定されなければならないものだというのはわかっている。けれど、この作品の中を流れる空気は良いし、マツジュンを除いたメインとなる4人の仲間意識は心地よい。櫻井翔が共通していることからどうしても「木更津キャッツアイ」のそれと比べてしまうのだけれど、正直に言えば「木更津〜」のそれには及ばないにしても、リアリズムとしてはかなりいいところまで行っている。この2作品と「ハチミツとクローバー」の出演で、櫻井翔は青春の終わりの象徴みたいに自分の中ではなっている。だから、「山田太郎ものがたり」で高校生役をやったときには、ギャグだとも皮肉だとも思ってしまった。
 一般的な評価はアイドル映画とられてしまうのかもしれないし、実際、「嵐」のメンバーの演技はジャニーズ演技を抜け出せているものではない。この映画の評価を下げている原因として、完全に現代的な顔立ちの香椎由宇の存在があるのだけれど、ミスキャストの感はあるとはいえ、こと演技に関してはそこまでひどく思えない。むしろエピローグの展開から言って香椎の大人びた顔の存在は不可欠だったのではないかと。あとおっぱい。
 そして、おそらく自分は犬童一心の演出がかなり好みなのだろうなと思った。資料映像を挟み込む演出は、ドラマとしての流れを絶つ可能性もあるけれども、個人的にはそれによってこの作品の情報量が増え、まとまっていないなりの良さが出たと思っている。
 芸術家を目指して同居していた4人が、漫画化志望の村岡(二宮和也)を除いて部屋を出て行くシーンには普通の思い入れを越した思い入れが個人的にはある。自らの孤独に耐えうる力や創作活動に対する誠実さに見切りをつける=大人になるということ。これがそのときの自分には正面から突きつけられてきたテーマだったからだ。
 わけのわからない感想になった。

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