OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

砂の器

 松本清張原作、野村芳太郎監督の映画。何気に、初松本清張だった。
 以前、熊井啓の映画について書いた時に思ったのだけれど、これをもっと派手にやれば「砂の器」になるな、と。そのときには、途中までしか「砂の器」観たことなくて、それで、最後まで見てみた。
 前半は、はっきり言って二時間ドラマレベル。だけど、逆に言えば今の二時間ドラマにこの文法がすでに完全に組み込まれていると言えるわけで、そのエキセントリックさがスクリーンから出ることはなかった市川崑の金田一シリーズとは対照的と言えるかもしれない。何気に市川崑の正当なフォロワーは大林宣彦だと思うのだけれど、野村芳太郎のフォロワーは名も知れぬ二時間ドラマの演出家というわけか。
 ただ、それでも日本の四季が織り込まれた映像は見るものを楽しませてくれる。正直に言えば、真実の目前でそれぞれのパートを止め、後半で一気に謎を解明するという、複線回収スタイルをとっているので前半はつまらないと思う。だけど、証拠がすべてそろったところで丹波哲郎が説明をする場面は感慨深いものがある。BGMもあいまってね。このBGMの効果は随一だと思う。
 有名な丹波哲郎加藤嘉の対面シーンはやはりすごい。それまでにも加藤嘉と子供の全国放浪シーンで、冬から春への流れを見せられているだけに、このお父さんがこれまでどんな一生を送ってきたのだろうと。結局、現在において激しい差別は存在しないから、今の自分にはリアルに想像することはできないし、共感して見せるのも偽善的に思えてしまう。だけど、こういったことがあったのだということは後の世に残していかなくてはならないのだろう。
 

砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]

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