僕らのミライへ逆回転(ミシェル・ゴンドリー)@桜坂劇場
ミシェル・ゴンドリーは「エターナル・サンシャイン」ははまれなかったのだけれど、「TOKYO!」の一篇は好みだった。だから個人的にこの映画をみるのは50%の賭けだった。
そして、その賭けは幸いにも成功した。
はじめはミシェル・ゴンドリーの柔らかな演出とジャック・ブラックのエキセントリックな演技の組み合わせには違和感MAXだった。日本で例えれば、岩井俊二の映画に阿部サダヲが出るようなものか。だが、ジャックが変電所で電気ショックを受けた場面を境にして、次第に慣れてきた。
思えば、ミシェル・ゴンドリーは映像美の技術に優れているくせして、「エターナル・サンシャイン」で子供のころ自慰が母親に見つかるシーンを導入するように微妙にキタナイというか、あまり大手を振っては描けないようなものを描きたがる傾向があるように思う。本作ではジャック・ブラックのゲロとかね。あと、スラップスティックコメディ志向も確実にあるね。
閑話休題。やはりこの映画のエンジンがかかるのは、ジャック・ブラックのせいでレンタルビデオ屋が大変なことになって、モス・デフの思い付きが二人で「ゴーストバスターズ」を撮るというこれまたトンデモで、というくだりで、アホだなーと思いながら楽しく観た。まともな奴はいねえのかと思いながら、だんだんこのswedeに参加したくなってくるんだ。
よく映画愛を前面に出した名作なんてのがあるけど、個人的には自画自賛しているようで、うーんといった感じになることも多い。しかしこれはすんなり入ってきた。思うに、変に高級ぶっていないからだろう。あと、映画に大事なのはアイディアだよねというのが伝わってくるのも大きい。
以下、ネタバレのため畳みます
後半はちょっとしんみりしてくるが、前半で張った伏線を一気に畳み掛けてきて面白い。個人的に好きだったのは、前半に「Keep Out Jelly(ジェリーをウチに入れるな;注:ジェリーとはジャック・ブラックの役名)」という店長のメッセージが裏返しになっていたのでモス・デフが中々気づけなかったシーンが、ラストの上映会でシーツに映写された彼らの自主映画というかたちでかかってくるところだ。
この映画をみると、失われていくのもいいかなと思えてきた。登場人物にとって一番ハッピーなシーンで終わっているだけに。きっと次の日からみんな職探しだの仕事だの現実に戻るんだろうなということがわかるから、ハッピーエンドだけどちょっとほろ苦い終わり方だった。
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