OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

先週の読書記録

一日七冊は新記録だわ

2009年3月16日 - 2009年3月22日の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3996ページ

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね■ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね
高校時代愛読していた漫画家岡崎京子さんの小説。バリバリのポストモダンです。やっぱりこの人の詩的な言葉はいいなあ。殆どストーリーは無いけど。あとは、内容のハードさから見て90年代中盤ごろかなと思ったらやっぱりそうだった。漫画とはまた違った魅力があると思います。
読了日:03月22日 著者:岡崎京子
http://book.akahoshitakuya.com/b/4582832121


夜■夜
橋本治の生活臭溢れる短編に流れる不穏な空気の正体。それは「寂しい」だ。桃尻娘シリーズ後期から「つばめの来る日」を経て橋本治の描く関係性は暖かなものからよりソリッドになってきた。そのひとつの到達点が「暁闇」だと思う。
橋本治が一貫して描いてきたのは「フツーに育ってきてフツーに狂った人たち」だ。彼ら彼女らは常に「寂しい」人たちだ。恐らくその「寂しい」が噴出する瞬間として最も適切だったのが夫が外に女を作ることだったのだろう。橋本治の眼は観察対象を見るときのように冷酷だ。最後の一編「暁闇」は100ページの中編で、橋本治お得意の同性愛小説だ。しかしここでもテーマは引き継がれ、「寂しい」という距離を埋められなかった人間をある意味悲劇的に描いている。言語化されなかったものを表現しようとする橋本治の作品はまさに文学だと思うが、彼の描く人間関係は袋小路に陥る方向へ向かい、何ら解決法も見つけだせていない。それでも描き切ろうとする姿勢こそが希望であり、私が橋本治を支持する理由である
読了日:03月22日 著者:橋本治
http://book.akahoshitakuya.com/b/4087712443


ボトルネックボトルネック
映画バタフライエフェクトを連想した。ボトルネックの意味はわりと早い段階に気付いていた。きっと似たようなことを考えたことがあるからだろう。それをライトな文体で書かれるとなかなかつらい。嫌いか好きかで言われると好きだが。


読了日:03月22日 著者:米澤穂信
http://book.akahoshitakuya.com/b/4103014717


ぬかるんでから (文春文庫)■ぬかるんでから (文春文庫)
変な小説。川上弘美に近い気もするが、「そこじゃねーだろ!」とツッコミたくなるユーモアは男性特有のものだろう。変な状況とそれを受け入れている主人公、そして自身を見つめる異常に客観的な眼差しが特徴的だった。


読了日:03月22日 著者:佐藤哲也
http://book.akahoshitakuya.com/b/4167739011


鏡の影■鏡の影
読んでいると日本人作家の作品だということを忘れてしまう。ファンタジーの枠に留まらない歴史的な息遣いがこの荒唐無稽な話に説得力を与えているのだと思う。神を脱する物語かと思ったが、ラストの意図が正直わからない。きっと解釈が分かれると思う。

読了日:03月22日 著者:佐藤亜紀
http://book.akahoshitakuya.com/b/4835440706



文章教室 (河出文庫―文芸コレクション)■文章教室 (河出文庫―文芸コレクション)
非常に80年代らしい、同時代感覚溢れる小説。実験精神が爆発している。この作品は批評ということを極端に意識しているため、当時の評論家の労苦が忍ばれる。だって、殆ど先回りされてるんだもん。


読了日:03月22日 著者:金井美恵子
http://book.akahoshitakuya.com/b/4309405754


現代思想の冒険 (ちくま学芸文庫)現代思想の冒険 (ちくま学芸文庫)
思想というものはやはりとらえどころがない。いわゆる研究史的役割の本だが、事実の列挙だけではすまない分、かなり複雑だった(これでも簡潔に書かれていると思うが)。何度でも読み返すため手元に置いておきたい。


読了日:03月22日 著者:竹田青嗣
http://book.akahoshitakuya.com/b/4480080066


ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)■ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)
この作品を本当に理解できるのはある種の女性のように思われる。KATE BUSHに文才があったらこんな小説を書くのだろうな。狂人とされる主人公の語りは決してすんなり読めるわけではないが、自分のテリトリーを守ろうとする子供じみた残酷さは確実に感じられた。純潔の美しさ。

読了日:03月21日 著者:シャーリィ・ジャクスン
http://book.akahoshitakuya.com/b/4488583024


国家と神とマルクス  「自由主義的保守主義者」かく語りき (角川文庫)■国家と神とマルクス自由主義保守主義者」かく語りき (角川文庫)
私は政治に関しては未熟ゆえ語る言葉を持たないだけれど、この人は例えば親米か反米かの極端な振れ幅に揺さ振られることなく、しかしどっち付かずにならないほどの聡明さのある人だと思った。あと鈴木宗男の印象が変わった。また、この本は佐藤氏の投獄中の読書体験も綴られているので、読書の快楽を知る人の共感を得やすいと思われる。哲学や歴史などの机の上の学問と、政治という現実の舞台を繋ぐ線の上に佐藤氏は立っているんじゃないだろうか。
読了日:03月20日 著者:佐藤優
http://book.akahoshitakuya.com/b/4043914016


スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)■スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)
キングの短編集。この人は「細に入った描写にも関わらず読みやすい、いや、読ませられてしまう」という最強の文体が特長なのだけれど、こういう人がショートショートを書くと情景スケッチみたいになるんだなー、成程。中編「霧」は間違いなく傑作。大部分がスーパーマーケットを舞台にしているのもアメリカのパニック物といった感じだし、緊張感溢れる展開も、余韻を残すラストもいい!強いて言えば霧の造形については別に派手にしなくてもいいんじゃないかと思った。ここはキングの趣味の部分なのだろう。
読了日:03月18日 著者:スティーヴン・キング
http://book.akahoshitakuya.com/b/4594002846


ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)■ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)
やられた!こういう仕掛けは今までに何回か読んだことあったけど、これは不意討ち。ちょっと寂しかった。物語の通奏低音となる少女観の時代による変遷も興味深かった。


読了日:03月18日 著者:桜庭一樹
http://book.akahoshitakuya.com/b/4150308209


自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間■自分の中に毒を持て―あなたは「常識人間」を捨てられるか (青春文庫)
周りから浮いていることを自覚しつつも命懸けで空気を読もうとしている私には耳の痛い話。すごく自分を肯定してくれる考え方なのだけれど、でもそれじゃ食って(食わせて)いけないんだよと苦い涙を流した。もっと早く出会っていればよかった。


読了日:03月18日 著者:岡本太郎
http://book.akahoshitakuya.com/b/4413090101


沈黙 (新潮文庫)■沈黙 (新潮文庫)
信仰は命よりも大事なのか。なぜ神がいるのなら救ってくれないのか。そして、キリスト教は日本には根を降ろさないのか。最近のキリスト教に関する事例とそれを巡る言説と照らし合わせると興味深い(宗派は異なるが)。宣教師側と筑後守側、どちらが善でどちらが悪と断定することはできないが、司祭の絶望と淡々と語られる顛末に胸が苦しくなった。内面的な分、ケッチャムより残酷かもしれない。
読了日:03月17日 著者:遠藤周作
http://book.akahoshitakuya.com/b/4101123152


緋文字 (角川文庫)■緋文字 (角川文庫)
序文で挫折しかかったけど、本編が面白い。硬質な文章と、登場人物の内面に切り込んでいく視点が現在でも刺激的。宗教色が強いので万人向けではないだろうが、「罪」というものに関して深く考えたいのであれば一読の価値はあると思われる。ラブストーリーとしての読み方もできるし。
読了日:03月17日 著者:ナサニエル・ホーソン
http://book.akahoshitakuya.com/b/4042137024


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