OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

先週の読書記録

2009年4月20日 - 2009年4月26日の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:2413ページ

パスクアル・ドゥアルテの家族■パスクアル・ドゥアルテの家族
スペインのノーベル賞作家、セラの小説。殺人者の一生を手記形式で綴ったもので、時系列がはっきりしない部分なども多い。信頼できない語り手の形式をとっているのかもしれない。だからこそ解釈がわかれるだろう。個人的には一人だけ死因がはっきり描かれていないのが怪しいと思うのだけれど。この作品が絶版とは惜しいな。
読了日:04月25日 著者:カミロ・ホセ・セラ
http://book.akahoshitakuya.com/b/406204434X


エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)■エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)
ガラス張りの部屋にいるかのよう爽やかさを感じた。物語を語るというメタ構造とか、現代社会に対する寓意などを考えられるほど煮詰まってはいないのが事実。訳者も書いているが、世界崩壊後に生まれた少年の目線で知ったことがすべてなので、読むのに苦労するのも事実。もしかすると美しい描写に浸りながら切ないラストに思いを寄せるのが正しい鑑賞法なのかも。

読了日:04月25日 著者:ジョン・クロウリー
http://book.akahoshitakuya.com/b/4594058019


アレグリアとは仕事はできないアレグリアとは仕事はできない
橋本治の短編を思い出した。ただ、橋本治ほど浮世離れしていない。仕事というものに寄り添っていて、描写がリアルだと感じた。普通に働いて、普通に狂うこと。カフカ言うところの「職業的人間」と比較して語ると面白いかもしれないが、カフカ詳しくないので…。他の作品も読んでみようと思う。


読了日:04月24日 著者:津村記久子
http://book.akahoshitakuya.com/b/448080417X


世界の小国――ミニ国家の生き残り戦略 (講談社選書メチエ)■世界の小国――ミニ国家の生き残り戦略 (講談社選書メチエ)
南太平洋の島国ツバルが国のドメインが「tv」だったことをきっかけにテレビ局にドメインを売り巨額の富を得たという嘘のような話から始まる。世界各国のミニ国家の歴史から経済政策を取り上げており、カリブ海や南太平洋の島国におけるオフショア金融センターにまつわる話や、ヨーロッパはルクセンブルクの外交術など、なかなか読んでいてスリリングだった。アフリカのような貧国もあるが。小国ゆえに国民の結びつきが強いというのは納得。小国とは可能性の塊かもしれない。
読了日:04月23日 著者:田中義晧
http://book.akahoshitakuya.com/b/4062583976


思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書)■思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書)
不二家耐震偽装ライブドアなど身近な話題を扱っているので理解しやすい。日本旧来の風習では調停的に解決してきた問題が、現代では法令遵守の印籠の前で抑えつけられている現状。戦犯のひとつはマスコミによるセンセーショナル重視の報道だろう。一方で放送法以上のザル法もないのだけど。結論が性善説をもとにしているようで腑に落ちないけど、司法に関する社会構造の変化は確実に必要だと感じた。

読了日:04月23日 著者:郷原信郎
http://book.akahoshitakuya.com/b/4062879786


電気菩薩―豚小屋発犬小屋行きの因果宇宙オデッセイ〈上〉■電気菩薩―豚小屋発犬小屋行きの因果宇宙オデッセイ〈上〉
特殊漫画根本敬の初期作品。私が持ってるのはこれではなく「豚小屋発犬小屋行き」という青林堂からでた本なのだけれど、Amazonにないらしい。ということで、この作家の中でも一番濃い部分が凝縮されているように思う。村田藤吉郎という冴えない中年がひどい目にあうという彼にとっての王道パターンも既に確立されている。冤罪で入れられた刑務所で仲間ができるけど刑務官に4人組作ってって言われてハブられるとか…。

読了日:04月23日 著者:根本敬
http://book.akahoshitakuya.com/b/4770501692


雪男たちの国■雪男たちの国
時折、狂人というのは実は誰よりもマトモで、本当はわれわれの目に見えていない(けど確かにそこにある)物を見ているだけなんじゃないかという気がしてくる。オブライエンの「金剛石のレンズ」を何故か思い出した。文章的な整合性はないし、理解もできないのだけれど、折を見て読み返したい。


読了日:04月22日 著者:ノーマン・ロック
http://book.akahoshitakuya.com/b/4309205151


グローバリズム出づる処の殺人者よりグローバリズム出づる処の殺人者より
インドという文字通りの格差社会において主人を殺して成り上がる男を乾いたユーモアで描いている。この乾いたユーモアが曲者で、人によっては深刻さが伝わらないかもしれない。個人的にもあまり得意ではないが、主人公のインド社会における負の連鎖を断ち切りたいという思いが感じられるため読後感は良い。

読了日:04月22日 著者:アラヴィンド アディガ
http://book.akahoshitakuya.com/b/4163275606


鼓笛隊の襲来■鼓笛隊の襲来
星新一ショートショートを思い出した。読み終わった後、でれれれれん、でれれれれんとあの有名な歌が流れてくるような感じ。遠い昔に置き忘れてきたような不思議な懐かしい余韻に浸れる短編集だと思う。
ただし、正直に言えば発想だけでかかれたように思えて、少々浅い感じもするのも事実。「校庭」は素直な怪談話。

読了日:04月21日 著者:三崎亜記
http://book.akahoshitakuya.com/b/4334926010


白猫亭 追憶の多い料理店■白猫亭 追憶の多い料理店
世界には言葉なんて何の意味も無い作品もあるもので。常識?倫理?それらが美しい調べに乗せて崩れて行くのを感じた。猫になりたい(by草野マサムネ)。


読了日:04月21日 著者:宇野亜喜良
http://book.akahoshitakuya.com/b/4093874905


クラッシュ (創元SF文庫)■クラッシュ (創元SF文庫)
長いこと積んでいたが読むきっかけが作者の訃報になってしまった。「少女革命ウテナ」というアニメに車をモチーフにした決闘場が出てくるが、その元ネタかと思った。
車は加速して止まれなくなった現代の象徴だ。車は明らかに世界をおかしな方へ変えた。免許をとるということは通過儀礼であり、車を使うということは常に死と隣り合わせ。ハイデガー的に言うと「死への存在」。作中に出てくるセックスがアブノーマルなのもそのためだ。そのことを今から30年前に指摘していたことが素晴らしい。だから今読んでも古く感じないのだろう。ご冥福をお祈りします。
読了日:04月21日 著者:J.G.バラード
http://book.akahoshitakuya.com/b/4488629121


読書メーター
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