OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

レスラー(★★★★★)

(※注:ネタバレ含む)
 ミッキー・ローク主演の映画。格闘技にはあまり興味がない僕にも面白く観れた。

 内容は、かつての人気プロレスラーだったランディ・”ザ・ラム”・ロビンソンが歳をとり肉体の限界を感じる中で自分の居場所を見つけ出すまでの話。
 興味深かったのが、プロレスは八百長、というかシナリオのあるショーであるということを特に隠しだてもせず描いていた点。リング上でいがみ合っているレスラーたちが楽屋でねぎらい合っている、その感じがなんかよかった。
 それと、これは特に前半に見られる演出なのだけれど、たとえば試合が始まろうとしていて入場テーマのハードロックがかかって盛り上がろうという時に次のシーンに移りかわる、といったシーンが多く、これがなぜかリアルな感じがした。

 物語の核として、20年前に名勝負を繰り広げたアヤットラーとザ・ラムの再戦というものがあって、ラムは一度はこれを自身の心臓発作のためあきらめようとするも、紆余曲折を経てもう一度向かっていく。そこには再起をかける男の姿が見えるも、そこから先はどうなるかわからない。仮に生きて還れたとしても、プロレスラーとしての成功があるとは限らず、スーパーの倉庫で働き続けるだけの生活が待っているだけかもしれない。
 そんな状況下にある中での頂点へ向かう瞬間、それをこの映画では切り取り続けているのではないかと思った。

 そしてもう一つ思ったことはプロレスラーという職業について。
 日本はまだタレントとして活躍したり、時には国会議員になったり、道が残されているのかもしれない。
 だが、本気で生涯現役で戦える人なんてほんの少しだ。みんながみんなジャイアント馬場になれるわけじゃない。
 同じ日に30年以上活躍するへヴィメタルバンドを描いたドキュメンタリー「アンヴィル」を観たときも思ったのだが、プロレスもヘヴィメタルも男子特有の夢を与え続けるアイコンであるという共通点がある。
 その夢を与え続けるために体をボロボロにして、保険もきかない貧困生活の中で、ただファンからの称賛だけを食って生きている。
 その姿はヒーローと呼ぶにふさわしいかもしれない。
 けど僕にはそれがとても悲しいものに映った。

 だから、笑えなかった。

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