ハートロッカー(★★★☆☆)
アカデミー賞でも話題になった映画。万人受けはしないと思うけど、かなり面白かった。
イラク戦争において、爆弾処理班のジェームズという男が主人公。
ジェームズはかなりデスペラード(命知らず)な方法で爆弾を処理していく。
これを観て考えたこと。
仕事人には二種類あると思われる。職人タイプとアーティストタイプ。
周囲との調和を図って仕事を進めるのが職人タイプで、この映画ではサンボーンがあたるだろう。
そして、その卓越した才能でもってスタンドプレーを推し進めていくのがアーティストタイプのジェームズ。
この対比は「振り返れば奴がいる」みたいなドラマに出てくるように、比較的古典的な図式。それなので、アーティストタイプのジェームズはそういったドラマにありがちな冷血漢なのかと勝手に思い込んでいた。
すると、DVD売りの少年と仲良くしたり、サンボーンの体調を気遣ったり、任務遂行後に恋人に電話をかけたりと人間臭いところが出てきた。
これで実はジェームズと言う人物のつかみどころがなくなってしまった。
ジェームズにとって爆弾処理とは仕事であると同時に、ライフワークに近いものであるのは間違いない。しかし、そういった物騒な側面を身に宿していて、命なんて何ともないようにふるまっているにも関わらず、彼は他者に対しては「優しい」のだ。
僕にはそのジェームズの優しさがどこから出てきたものなのか見当もつかない。
戦争に行くという選択肢がある日常においては、戦争さえも他の趣味と同様に相対化されるのだろうか(ジェームズがプレイステーションをやっているシーンがやけに印象に残っている)。
演出としては、16ミリをつかった手ぶれを多用した映像がリアリティを増していてドキュメンタリーのような質感があった。人が死ぬ時もドラマチックに盛り上げたりせず、北野作品の登場人物のようにあっけなく死んでいったのも印象的。全編を通して無茶苦茶なほどの緊張感。
ともかく、911以降の重要な戦争映画であると思う。
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