B.A.D.(Bigger And Deffer)/真心ブラザーズ
真心ブラザーズが1997年に出したベストアルバム。と、いってもシングル曲をただ並べただけのベストではなく、それまでアルバムに入ってなかったデビュー曲「うみ」が入っている一方で、代表曲「どか〜ん」をはじめとして「モルツのテーマ」「オバタリアンのテーマ」などちょっと商業的な曲を外した、ストイックな作りになっています。
俺にとって90年代の原風景を描いたバンドは真心とピーズとハイロウズです。3者ともダミ声が印象的で、夏のにおいがするのが特徴です。
その中でも真心に、というよりもYO-KINGに感じる強さはなんなんでしょうね。真心を少し聴きあさればわかるんですが、この世がろくでもないってことは現状として持っているんですね。それはヒロトもマーシーもはるも一緒ですが、けどそれを打ち砕く手段に、真心には知性を感じるんですね。かといって不誠実なわけではない。なんだか、世の中はろくでもないしかといってひねていても何も変わらないから俺は熱くなるよとポーズを決めているけれども、実は本気で熱いんじゃないかっていうのが端々から出ているのを楽しむような感じですね。そうか、YO-KINGはツンデレなんだ。
M-1「拝啓、ジョン・レノン」で歌われるジョン・レノンへの畏敬、M-6「空にまいあがれ」に見られる友達(というより桜井)への尊敬の念、後の妻になるYUKIとのデュエット「キモチE」(RCサクセションのカバー)、ラストを飾る「素晴らしきこの世界」のメッセージ。どれも、バンド名と相まって気恥ずかしくなるような熱さ。世紀末ということもあってある種の諦念があった時代に逆行するような姿勢は、熱狂的なファンを集めると同時にヒットチャートのメインストリームとはなれなかった(それでも「サマーヌード」など、純粋に素晴らしい楽曲が書ける才能があったので少しは認められたけれども)
初期の真心には照れを隠すようなニヒルさがあったのだけれども、「素晴らしきこの世界」の2分49秒目でロックを手にして以来、熱くなることを前に出せるようになったのだろう。とにかく、ポジティヴ。元気が出る。
真心ブラザーズ入門にも最適な一枚。
★★★★★★★★☆☆