白夜行(★★★★☆)
2011/1/29鑑賞
@シネマQ
本当は★5つでもいいかと思ったけれど、同じ日に『ぼくのエリ 200歳の少女』を観て、そちらの印象があまりにも大きかったので。
今回はネタバレせずに語ることができないと思うので、原作未読の方はまだ読まない方がいいかと。
自分、原作の『白夜行』にすごく思い入れがあるんですよ。
なんというか、ミステリーって・・・すげー!!!みたいに改めて思わせてくれた作品で、だからさすがに映像化は無理だろうと思って、ドラマもそんなに面白くなかったし、ただやっぱり原作ファンとしてはこの目で確かめておかねばならんだろうということで観に行ったわけです。
結果は、かなりの傑作に仕上がっていたと思います。
全体を通して、構成は『砂の器』や『天城越え』などの松本清張原作映画に近いものがあると思います。特に前者には相当影響を受けています。そういう映画を2010年代の今劇場で味わえたのがうれしかったです。
最初の幼少期エピソードは特によかったです。主演二人の、とある事情があって大人をまったく信用できなくなってしまったが故のあきらめみたいなものが子役の演技からひしひしと伝わってきました。
だから、高校生のエピソードになった時少し不安を覚えました。高良健吾は大丈夫だと思ったんですけど、堀北真希の演技を観た時、ちょっと「普段から演技してますよ」みたいなのを表に出し過ぎなんじゃないかと思って。ただ、話が進むにつれ徐々に慣れていったのか、静かな狂気みたいなものがかなりうまく表現できていたのではないかと思います。
この演技は『告白』の松たか子のアレに近いものがあります。ただ、松さんのアレよりは凄味がない分、想像力で補う部分が大きくて、それがより狂気を感じさせたんじゃないかと。
ただ。実は「想像力で補う」というのがこの作品の肝で、二つのエピソードが交わらないけれど実は交わっているんじゃないかということを考えた時に見える残酷な真実が原作の魅力でもあるので、だから中盤まではそれを極力排して描いていたのでかなり惹きつけられました。
ので、終盤の謎解きに入ると少しトーンダウンしてしまったかなと思います。
船越英一郎はこの映画の中では異物なわけです。主演二人のピアニッシモな演技で彩られたひんやりとした世界の中でそれに翻弄される姿、というのが中盤までは活きていたのですが、終盤に二人への介入を始めた途端にまるで映画全体が火曜サスペンス劇場に堕してしまった気がして・・・。
やっぱ序盤〜中盤までの魅力が直接描写を避けることにあっただけに、謎解きの回想シーンはなるべく省く方向がよかったと思います。この欠点は『砂の器』等一連の松本清張ムービーの欠点でもあるわけですが。
あとは二人の計画って偶然に頼り過ぎだろとか、雪穂があそこまで成功にこだわる理由がわからないとか、どんだけレイプ万能なんだよ、等欠点もないわけではないです。どれも原作の欠点ではあるわけですが。
ただ、原作では描写しなかったラストの雪穂の表情を映したのは、「おー!それ撮っちゃいますか!」と興奮しました。しかも原作好きとしては十分納得できる撮り方で。ひょっとするとこれ堀北真希が日本を代表する女優になる第一歩になるんじゃないかとくらい思いました。