変身('05/佐野智樹)(★☆☆☆☆)
2012/1/10鑑賞
DVD
本当に申し訳ありません。
単純に映画的快楽があまり感じられない作品でした。
原作は以前読んだことがあって、もともと東野圭吾は好きでよく読んでいたんですけれど、その中でもあまり上位の方には来ない作品じゃないかと思います。
とりあえず、序盤はそれなりに楽しめました。蒼井優の全盛期(2005年前後)ということもあって、彼女の演技に込められた情報量が物語の推進力になっていた。恋愛体質気味で若干ウザめな女の子というのをうまく演じきれていたと思う。ただ、それは後に描くような問題点を発生させているけれども。
あと、結構物語の本筋とは直接関係ない範囲になるけれども、主人公成海純一(玉木宏)の性格の豹変というのは、実は文系脳と理系脳の対比構造が根底にある。僕が以前理系の人と話した時に、とにかく徹底して無駄を嫌う考え方にカルチャーショックを感じたことがあって、それ以来理系の人は僕のような文系とは根本的に考え方が違うんだなという思いを強めている。東野圭吾自身も理系だし、彼の作品には理系に対する複雑な意識が垣間見える。これが、エンターテイメント作家東野圭吾の作家性であり、逆説的にいえば文学的な部分じゃないかと思います。
ただ、後半はそんなに面白くない。
まず、前半から感じていたことだけれども、この映画、屋内の照明がおかしい気がするんだけど。
照明に詳しいわけではないが、明らかに人工的にしか見えない。それも、ヒッチコックやデヴィッド・リンチの出す人工性とは違い、何の効果も生んでいないから、どうも貧乏くさくなっちゃう。
序盤が少しは面白かったのも、まだ屋外撮影の箇所が多かったからだし、後半は完全に屋内で物語が進むのでつまらなくなる。
あと、愁嘆場でかかる音楽がいくらなんでもクサすぎでしょ!なんか韓国ドラマみたいで、ここまでベタだと感情移入できなくなるものだと感じた。まさか自殺シーンにあんな感動的なBGMを流すとは思わなかったよ。
死の取り扱い方もちょっとよくないし(ピストルを撃つ際の演出なんて最悪だと思うんだけど)、台詞やモノローグで処理する場面も多くて興ざめするし、あと脚本もだいぶ破綻している。「裏切った」問題がどうなったのかわからないとか、蒼井優は前述の通り恋愛依存を強調した演技をしているため彼女の愛情あふれる選択が説得力を持たないとか、なによりエピソードごとのつながりが薄いためどんどん置いてけぼりを食らう気がする。
なんか、パワーを吸いこまれる感じのする作品でした。
- 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
- 発売日: 2006/05/26
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