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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

ファーゴ('96/ジョエル・コーエン)(★★★★★)

2012/1/14鑑賞

DVD



 コーエン兄弟の代表作。1996年作品。



 恐怖の演出等見事であり、ミネアポリスの雪の風景も相まって映像だけ観ていても飽きない出来なのに、この上ストーリーも素晴らしいという奇跡のような作品。



 何作か観ていて思ったのだけれども、コーエン兄弟の作風として、自己中心的な人間に振り回される中間管理職的立場の人間の悲哀というものがある。それは、依頼者側のジェリー(ウィリアム・H・メイシー)−義父ラインの関係と、誘拐者側のカール(スティーヴ・ブシェミ)−ゲア(ピーター・ストーメア)ラインの関係が表裏一体のものであり、この二つが呼応するように転がっていくことで観客の興味を持続させることに成功している。

 その問題の解決にあたるのが保安官のマージ(フランシス・マクドーマンド)であり、彼女は利他的存在を体現している。つまり、懐妊中という本来なら自分のためだけに行動してもおかしくないにも関わらず、それを推して勤務を行うところにそれが現れている。

 実はこの3つはあからさまに連動しているわけではない。だから、この物語を単純に「正義が勝つ」のお話にはしていないのだと思う。例えば、マージは結局暴力性でもって解決を図っているのであり、説得自体には成功していないところとか、ストーリーには直接関係しないマイク・ヤナギダの存在が彼女の考え方に一石を投じているようにも見えるところとか)。

 ただ、ひょっとするとマイク・ヤナギダの存在はコーエン兄弟から暗に「この物語はフィクションですよ」といわれているのかなという気がする。今現在においては『ファーゴ』は冒頭の文句が嘘であり、実際に起きた事件ではないと広まっているけれど、当時は騙される人もいたと聞くし。



 あとは、ジェリーの妻が誘拐される際のシークエンスは、電話を持って立てこもるもドアの向こうから電話線を引っ張られるくだりなど後に『ノー・カントリー』('07)につながるような演出があってとてもよかった。そういえばゲアのキャラクターは同映画のアントン・シガー(ハビエル・バルデム)に通じるものがある。



 それと雪に覆われた場面が多かったのがとにかく印象的だった。義父との交渉が破談に終わった時にとぼとぼ歩くジェリーを駐車場の上から映した場面など本当に美しい。雪景色というのは、小さなもの(雪)が大きなものを変容させてしまうところに何か映画的な快楽を感じるのではないかと思った。