OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

ヤッターマン('09/三池崇史)(★★★★☆)

2012/1/18鑑賞

DVD



 2009年公開。70年代の人気テレビアニメの実写映画化。監督は三池崇史

 もとのアニメに関して、だいたいの知識はありますが実際に観たことはありません。



 とにかく冒頭10分が素晴らしくて、瞬間風速的になら★10個あげてもいいくらい!

 まずアクションシーンとして観ていて気持ちいい!スッキリと整理されていて見やすいし、きちんと躍動感もある。

 それにね、お約束のものが実写映像で再現されるたびに「来たぞ来たぞー」ってな具合で盛り上がるのもこの映画の愉しみなところであった。

 前半60分くらいはこんな感じで結構盛り上がれるのだよね。ギャグも笑えるし。



 ただ、後半に入ってから若干失速気味。

 理由としては、さすがにずっと一様のテンションなので飽きが来ること、それと、「ドクロストーンを追うエピソード」と「ドロンジョ様の初恋エピソード」があまり噛み合っておらず、相乗効果が弱いことなどが挙げられます。

 これ、本当にそれぞれのエピソードとしてはかなり面白いだけにもったいない。

 あとは音楽の使い方があまり上手くないと思う。ちょっとしっとりした場面に流れるピアノのBGMはいくらなんでも多用しすぎ。『ROOKIES 卒業』(’09)じゃないんだから!

 「初恋」エピソードが一応の収束を見せてからのラスト30分は持ち直した感じがあります。



 あと、気になったこと。

 実写版『ヤッターマン』ではかなりエロチックな表現を暗喩的に、というかここまでくればモロにみせている。

 けれども、あまり個人的にはエロスを感じないんだよね。

 例えば、大槻ケンヂのヰタセクスアリスはガッツ星人によって磔にされたウルトラセブンだと彼のエッセイに書いてある。おそらく、ウルトラセブンの製作者は少年たちに性の目覚めを促そうなどとは思っていなかったに違いない。まあ、ウルトラセブンの製作に携わった実相寺昭雄はその後官能的な作品を撮るけれども、あくまでもここは、製作者の情念を意識下で感じ取った大槻少年が、その情念に促されるかたちで性の目覚めを迎えたという解釈が適当だろう。

 ここで思うのが、例えば深田恭子演じるドロンジョは谷間を強調しており、爆発などによって衣服が破けるなどの扱いを受けるが、それでも不思議なほどにエロスを感じなかった。

 かと言って、おそらく観た人すべてが話題にあげるであろう岡本杏里の生足もそんなでもなかったし、ヤッターマン1号と2号が電激を受けているシーンが明らかにセックスを連想させるのも、それ止まりで、官能性というものがあまり感じられなかった。

 これはもう本当に、三池監督が『ヤッターマン』のコンセプトを原作に忠実に映画化しているのだろうけど、ヰタセクスアリスの再現までは技術が及ばなかったというところか。というよりも、ヰタセクスアリスを受けるような表現は狙ってできるものではなく、もっと情念的な何かが必要ということかもしれん。

 もちろん、僕はもう子供ではないので、子供がこれを観て「性の目覚め」を覚えるかはわからないけれどね。