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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

海洋天堂(★★★★☆)


2012/1/23鑑賞

@リウボウホール



 ジェット・リーがアクションを封印して挑んだことで話題になった作品。

 水を特徴的に映した映像が綺麗で、物語にもぐいぐい引きこまれた。特に自閉症の青年・大福(ウェン・ジャン)がプールで初めて鈴鈴(グイ・ルンメイ)を観るシーンの、水の中から映した顔が見事。年輩のお客様が多く、すすり泣く声があちこちから聞こえました。



 実はジェット・リーの映画をまったく観たことなくて、一応『エクスペンダブルズ』(’10)で観た限りだった。ので、本当なら「あのアクション俳優があえて封印してまで・・・」というような文脈的なおどろきを感じることが出来なかったのはちょっと悔しい。

 ジェット・リーの顔って、なんかすごく優しそうじゃないですか。だから、僕はこの配役が異化効果を発生させることはなかったように思います。



 ただ、そういったことを抜きにしても、すごく味わい深い物語でした。



 某匿名掲示板なんかだと、障害者に対する悪意ともいえる書き込みが目立ちます。それは確かに正論かもしれない。この映画を観ていても、自閉症の大福(ウェン・ジャン)が果たして何か世の中の役に立っているのかといわれたらYESとは答えられない。

 同じく自閉症をテーマにした『レインマン』(’89)において、ダスティン・ホフマン自閉症とはいってもサヴァン症候群であり、或る程度社会への参加が可能とされている(一方で彼はそれを選択しない)わけです。もちろん、この映画が自閉症の理解において果たした役割は大きいし、ダスティン・ホフマンの演技もあって面白い作品には仕上がっているのですが、残念ながらエンターテイメントとしての限界があって、障害と向き合いきれていない。

 さて、この映画に出てくる自閉症の青年・大福には、驚異的な記憶力とか、そういった特殊能力はありません。他人の助けを得なければ着替えさえできないし、時折癇癪を起しては周りを混乱に陥れます。

 確かに彼は社会の役には立っていない。ジェット・リーは「私は親だから面倒をみる責任がある」と言う。しかしながら、障害者が社会において守られる理由は、本当にそれだけだろうか。

 合理的な考え方を抜きにしてまで、その人を大事にしたいという気持ちがあり、それは「愛」といった言葉で言い表わされるものかもしれないけれど、そういったものでもって、私たちは人間足り得ているのかもしれない。

 

 この言い方が正しいのかはわかりませんが、大福を本当にうらやましいと思った。

 なぜって、周りの人から本当に愛されて、大切にされているのがわかったから。

 

『海洋天堂』は、障害者と余命いくばくもない父親という、限定された設定にしているように思えるが、僕にはこの物語がすごく普遍的なものを描いているように思った。



 周りの手助けが無ければ生きていけないのは、すべての子供にとって同じことです。親がいつまでも彼らの手助けをしてやることができないのも、残された時間は違えど、変わりない事実です。

 だから私たちは何をしていくべきなのか。根気よく社会のルールを教え、一緒に遊ぶ。なかなか覚えなくても、根気よくやっていく。ゆっくりゆっくり、その繰り返しを積み重ねていくことでしかできない。

 それは言葉で言うほど簡単ではない。だが、そういった不条理なことでも乗り越えるのは、理屈を超える愛だと思う。

 ジェット・リー演じる心誠や、大福に愛情を注ぐ女たちにもそれが当てはまる。彼女たちが彼らを好きになることにバーターはない。それでも愛情を注ぎ続ける姿に心打たれた。

 僕がオールタイムベスト選ぶときに必ず入れる映画に『オアシス』(’02)があるのだが、この映画も障害というものを通して愛情というものが理解や理屈を超えたものであり、そういったものがあるから人間は生きられるのだというテーマに立脚している。僕は正直このテーマに弱い。



 同時に、僕がここまで生きてこれたのもこういった周りの人から愛情を注がれてきたからなのだなと改めて実感させられた。私事だが、僕はあまり両親と仲が良くない。だから、すごく胸に突き刺さった。

 自分の行動に対する反省を感じながら、映画館を後にした。すぐには出来ないだろうけど、いつか必ず感謝を表明しようと思いながら。

海洋天堂 [DVD]

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