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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

小悪魔はなぜモテる?!(★★★★★)


2012/2/9鑑賞

DVD



 原題「EasyA」。



 おそらくは、年末にベストテンを選出する際にこの映画の扱いをどうするかが難しくなる人が出てくると思う。選定基準で行けば、キネマ旬報には挙げられないが、映画秘宝には挙げられる。

 リリース自体は2012年であるものの、実際に公開されたのは2010年、日本では劇場公開はなし。

 今までにもDVDスルーの名作は数多くあった。『バス男』('05)、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』('08)、『スリ 文雀』('09)。

 しかしながら、これはもともとタランティーノがその年のベストに上げていたこともあって、盛り上がりが今までのDVDスルー作品とはケタが違う感がある。

 

 内容の話。

 この映画は、主人公のオリーブ・ペンダーガスト(エマ・ストーン)がネット配信を行っているところから始まる。この、ナレーションが不自然にならない設定が見事!

 連想したのは、ドリュー・バリモア主演の『25年目のキス』('99)とか、あとはやはり『(500)日のサマー』('09)とか、あとは作品内にも名前の出てくるジョン・ヒューズの作品群など。

 思うのだけれども、これらの映画ってつまるところ、正当な映画史からは除外されているきらいがある。映像のリッチ感とか、役者の素晴らしい映画的に演技、脚本における人間性の深さなど、そういったオールドタイプの映画通好みのポイントから外れるからかもしれない。

 しかしながら、僕は思うのだけれども、決してウディ・アレンってそれらのポイントを満たしているわけではない。にもかかわらう、ウディ・アレンは(いささか異端な位置ではあるものの)映画史の中で主要なポジションを占めている。代表作とされている『アニー・ホール』('76)はすくなくとも映像としてのリッチ感は当時としては劣るし(『マンハッタン』('79)ではかなりリッチな映像が見られるので彼はできないわけではない)、台詞も多すぎるだろう。けれども、ウディ・アレンの映画は純粋に面白いから評価される。



 長い枕になったけれど、この映画の魅力はまさにオリーブの語りによるところが大きい。まるで女版ウディ・アレンとでも言うかのように絶妙な表現を行い、物事に動じない様はこの上なく魅力的だ。

 あと、やはり彼女の行動が利他的であることも大きい。彼女は周りからビッチに見られればビッチ風の服装をし、性病の疑いがかけられようともそれを受け入れる。しかしながら、これは彼女に自我がないわけではない。むしろその逆。彼女は、周りからどう思われようともかまわないと思っているからこそ、利他的な行動がとれるのだ。その証拠は随所に見られる。例えば、ビッチ風の服装をしつつも胸元に赤い「A」を入れる。これはナサニエル・ホーソンの『緋文字』からの引用であり、この、いかにも頭カラッポなファッションとアメリカ文学を経由した知性をサンプリングさせるところに、彼女のクレバーなところが見て取れる。

 ちなみに、ここは『25年目のキス』でドリュー・バリモアも近いこと(ハロウィンパーティーでシェイクスピアからの引用を行う)を行っていたのだが、こちらは若干浮き上がっていた。



 そして彼女はその利他的行動が原因である逆境に追い込まれる。だが、そこもユーモアを駆使して切り抜けていく、その様が見事だった。

 よくよく考えればストーリーとして開始地点から大きく動いているわけではない。そこが映画的ダイナミズムの欠如と呼ぶか、それとも日常に溶け込むストーリーとしてとらえるかはわからない。けれども、ひとつ言えるのは、多分僕は一年後には今よりもこの映画が好きになっているだろうということだった。