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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

東京プレイボーイクラブ(★★★★★)


2012/4/11鑑賞

桜坂劇場Bホール



 弱冠24歳、新進気鋭の映画監督奥田康介の劇長編映画デビュー作!



 とにかく、観終わってから一刻も早くキーボードをたたきたくてたまらなかった。血液が沸騰するような映画経験は久々だ。まとまった内容は書けないと思うが、とにかく書く。

 この映画には冒頭、工事現場の騒音に文句をつける浪人生とか、スルーした通行人につっかかるポン引きなどの描写がある。いやだなー、と思ってしまう。

 だが、この映画自体がそもそも、彼らのような性格を持っているのだと思う。

 ここに出てくる登場人物は皆ステレオタイプだと言っていい。冒頭の浪人生なんか、今時この描写はないだろうと考えた。小道具や、風俗嬢の会話などにはリアリズムを追及している節があるし、そのため全体的に豊潤な印象を受けるのに対し、登場人物だけがいやにステレオタイプなのだ。

 だが、これはおそらく意図的なものだ。冒頭に登場したポン引きが妊娠した浮気相手に対して、いかにも薄っぺらな「希望」を語るあたりがまさにそれだ。

 この映画の登場人物には想像力が欠如している。自分の行動がどういった結果を引き起こすのか想像ができない。だから、その場しのぎの行動をとってしまう。得てしてそれはステレオタイプになってしまうのだ。

 人によってはidiot plotにも思えてくるだろう。なんでこんな行動をとるんだ?と観客は頭の中でツッコミを入れずにはいられなくなる。そうやって心の中で嘲笑をしていた登場人物たちが、どんどん袋小路にはまっていく。そこでぼくたちは、この映画に描かれている世界は、ぼくたちと隣り合わせにあることに気がつく。

 

 ぼくは大学も出ているし、それなりに安定した職業に就いている。しかし、どこかで躓いて学をつけるのを断念していたら、この世界に住んでいたのかもしれない。

 この映画は、決してその世界からの脱出方法は示されない。もっともどん底の状況、しかしながらアドレナリンの分泌が最大になっているところでエンディングロールになだれ込む。エレファントカシマシの『パワー・イン・ザ・ワールド』に充満するエネルギーが、ぼくのアドレナリンを限界まで持って行ってくれたように思う。これを超える映画が今年現れるだろうか。



 欠点もないわけではない。特に、中盤に出てくるあるシークエンス。これは下手したら石井隆園子温という、日本映画二大巨匠にケンカ売っているようにも思われかねない。ひょっとして奥田監督自身もその結果が想定できないのか?それ以外にも、脚本にも細かく見れば粗は散見されるだろう。光石研の金銭管理のずさんさなど。

 

 ただ、この映画自身が、そういった欠点も内包した上で、かなりのエネルギーを放出しているので、それすら魅力に思えてくるのだ。この監督がぼくと同世代であることも贔屓の要因となっている。ぼくと同世代の監督さんで、これだけ衝撃的な作品を撮る人が現れたというのは素直にうれしい。



 なんというか、この映画には確実に毒がある。ぼくはこの映画から受けた何かを吐き出したくてたまらなかった。そのまま抱え続けると日常生活に支障をきたすような危険性があると思った。

 映画館を出た後の街並みが異様に怖く思えた。

パワー・イン・ザ・ワールド

パワー・イン・ザ・ワールド