OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

プライベート・ライアン('98/スティーヴン・スピルバーグ)(★★★★★)

2012/5/5鑑賞

DVD



 スティーブン・スピルバーグ監督。1998年公開の戦争映画。

 この映画は1回や2回見たくらいじゃ到底語れないので、覚書にとどまると思う。



 発表から10年以上経っているが、今なお映画表現はこの映画から先に進めていない気がするし、この先も進めないんじゃないかという気さえしてくる。

 昨今では3Dだのなんだの言われているけれども、この映画の冒頭30分のノルマンディー上陸のDデイを観ればわかるはずだ。銃弾や爆撃は確かに飛び出してきている。現役軍人を集めた試写会で拍手が起きたほどだという迫力。銃弾が空気を切る音とか、人体に当たった時の音、また、その様子とか、そういったものが、きっとこうに違いないとしか思えない。経験していなくてもそうとしか思えないのだ。



 かように、戦争の暴力性を最もリアルな形で提示している。

 さらに、戦場という場において、かろうじて機能するヒューマニズムを、「兄弟がすべて戦死したライアン二等兵を救出して本国に送還する」という筋書きや、その他のサブエピソードで披露している。



 加えて、第3の構成要素だが、実はこういった戦争の暴力性に恐怖を感じる一方で、確かに銃火器を扱って敵を制圧することには男性的な快楽が伴うというのも、感じずにはいられない。

 あらかじめ恐怖が提示されているからこそ、こういった感情が自分の中にもあるということを認めるのは、少々怖い。

 だが、暴力性はだれの中にもある。そして、それには常に恐怖が伴う。ヤン・イクチュン監督作『息もできない』('09)では、暴力でしか自分を表現できない男が描かれ、彼は「自分は殴られないと思っている奴ほど殴りたがる」と、その恐怖を伴わない暴力を批判した。戦争はもちろんよくないのだけれども、戦争から離れるとこのことを忘れてしまいがちになるのだろう。



 上記のような要素を含みつつ、また、現代人のメンタリティーとの橋渡しとなるような人物(アパム。ジェレミー・デイビス演)を配置して、さらにエンターテイメントとして破綻するかしないかのぎりぎりのところで魅力を放っているのが本作だと思った。



 一度スクリーンで観てみたい。

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