ドラゴン・タトゥーの女(★★★★☆)
劇場公開時に観たときにはまったくピンと来なかったのだけれども、最近レンタルで観直したらようやく腑に落ちた感があった。
まず、この映画、どうしても外観からミステリーを期待してしまう。
そもそも、映画とミステリーの相性は良くない。推理という、読者との対決でありフェアネスが高い水準で求められるものは、ある意味で大きな嘘である映画との食い合わせが悪いのは当然。ミステリー小説を題材にした映画なら傑作はあるけれども、こと謎解きに主眼を置くと、ミステリー小説以上の快楽を与えてくれたものはない。
だからこの映画も、ミステリーとしては落第点だと思う。これは宣伝も悪いんだよ。確かに驚くべき話題作にはなったけれども、同時に本来この映画を観るはずのないライトファンを困惑させた。
だが、そのことを念頭において観た二度目からは面白く見ることができた。
まず、エンターテイメントの構成としては、実はけっこうバランスが悪い。ので、すんなりとは観られない。
リズベットを中心に考えると、彼女はこの映画内で3つのイベントを経由している。
その割を食ってか、ミカエルとリズベットがタッグを組むまで1時間以上かかっている。
1回目観た時はこの構成もちょっと受け入れられなかったけれども、改めて考えるとこれは実に豪華なものなのだ。このカオスさが、終盤のせつなさを強調している。
また、ミステリーとして落第点である以上、これが映画としての力を持つには埋め合わせのために突出した何かがなくてはならない。
それはミカエルやリズベットというキャラクターの持つ魅力、二人の関係性の変化などを読み取る映画的な快楽だった。
ミステリー部分はセリフで処理されている部分が多い。だが、このセリフとして語られることがきちんと心地よさを生んでいると思う。これは、実は『ソーシャル・ネットワーク』('10)より継承された部分だ。
※以下ネタバレ
この映画、実は『ソーシャル・ネットワーク』と非常に似通った構造を持っている。
ザッカーバーグとリズベット。どちらもITに精通しているが、コミュニケーションに難がある。そして、どちらも最後には失恋する。
ITは現在のドラマにおける役割としてほとんど万能なものになっている。
ので、天才ハッカーは一種の魔法使いだ。
力を手に入れた者が幸せになれるとは限らない。しかも、いったん力を持ってしまえば後戻りはできない。
それは、彼ら自身に課された宿命のせつなさであり、現在のわれわれにも大なり小なり思い当たることなのだ。
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