苦役列車(★★★★★)
2012/7/28鑑賞
@シネマパレット
山下敦弘監督の新作。原作未読。
(沖縄での)初日初回鑑賞。10人足らずしかいなかった。おかしいなあ?ぼくの計算だと前田敦子ファンが300人は来るはずなのに。
面白かったなー。
とにかくオープニングで、「出演」「森山未來」と出たときのフォントが最高で、えっ、このフォントまだ使えるの?と思ってしまった。
オープニングで示される通りこの映画、小道具の細部に至るまでそうだし、フィルムの質感からいっても、80年代の日本映画に対しパロディになるスレスレでのオマージュをささげている。『ノルウェイの森』もこの方法論で撮ってほしかった。
やはり出色なのが森山未來の演技。『モテキ』('11)とはまた違うベクトルの嫌な男子を演じている。確かに嫌な野郎だし、スクリーンの前で「ああ、なんでそんな行動とっちゃうかな?」とほぞをかむ思いなのだけれども、映画館を出たときに確かに彼に同調している部分があったと感じてしまった。そんな余韻があった。
とにかく、森山未來演じる貫多という人物は他者に対し徒に攻撃的だし、すぐ自虐的なことを言う。すべて、自分のコンプレックスの投影なのだけれども、それにすら気づいていないというキャラクター。太田光にも似ている気がする。
彼が、ありとあらゆる挫折を経て、挫折を経たまま周囲の状況としては一切変わっていないのだけれども、それでも一歩足を進めるところで話が終わる。このあたり『SR サイタマノラッパー』'(09)を連想した。
あっちゃんもわるくなかったなあ。
全然体のラインが出ていないのにそれゆえに中身を想像させる服装はナイスだと思った。さすが伊賀大介。
なんかヒットしていない理由を前田敦子に求める声があって、ぼくはそれがちょっと不快。やつらまず叩きたいという欲求があって、それから理由を探しているんじゃないかと思う。
この映画、おそらく今年公開された日本映画の中でも上位に入る出来だし、こういった作家性の強い監督作品を選ぶのは女優生命を長らえることにつながる。
しかしながら、万人受けする素材ではない(しかし、ある種の突き刺さる人には突き刺さる)作品ではある。
ただ、前田敦子本来の魅力に立ち返ると、実はそういった手法のほうが有効なんじゃないかとさえ思う。
のですがいかかでしょう?
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