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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

おおかみこどもの雨と雪(★★★★★)


2012/7/21鑑賞

@シネマQ



2012/7/23鑑賞

@シネマQ



2012/7/29鑑賞

@サザンプレックス



 細田守る監督最新作。



 個人的に年間ベスト級の作品というのは、出会った瞬間に首根っこつかまれるものだ。理屈や論理を超えてこちら側へひょういときてしまう。



 そういった映画をいかに論じるかは難しいが、なんとかやってみよう。



 ぼくがこの映画と似ていると思ったのは『八日目の蝉』('11)だった*1

 不倫相手の子供を身ごもった女性が、自分を誘拐して4歳まで育てた母の足取りを尋ねるというプロットのお話。

 説明的なせりふや不自然なせりふが多かったり、ちょっと長い感じもするため全体としての評価は少し低めだが、ぼくはこの映画でとても好きな箇所がある。

 それは、逃亡先である小豆島での生活のシークエンスだ。

 ずっとなんでここが好きなのかと考えていたが、『おおかみこどもの雨と雪』を観ることでようやくわかった。

 

『八日目の蝉』のプロットは、カウンセリングでいうところの「インナー・チャイルド・ワーク」の過程そのままである。

「インナー・チャイルド・ワーク」とは、何らかの理由で自己評価が低くなった者が、子供のころの自分を自分で抱きしめて大丈夫ということによりそれを取り戻す作業。ぼくが小豆島のシークエンスが好きなのも、無意識的にこの作業を行っていたからだ。



 そして、『おおかみこどもの雨と雪』は、それを観るものにとっての「インナー・チャイルド・ワーク」になる。

 だから、賛否両論が分かれるのも当たり前で、それは観た人がそういった作業を必要としているか否かによるのだから。



 ぼく個人としては、もちろん愛情を注がれて育った自負はあるが、若干過保護に育てられたため、定職にはついているもののいまだ自立ができていない感覚はある。

 だから花の子離れを受け入れる姿はとてもうらやましかった。

 

 人間は誰しもが母親から生まれたわけで、最初に接する人間は母親だ。

 生まれたときは誰しも、とは言わないまでも、母親や周囲の人から愛されていた。そして育てられた。

 年齢を重ねるにつれて、自立が必要となるためそういった愛情を自分の側から拒絶する必要がある。この時期は自分のルーツを否定し、さらに周囲の人間は助けてくれないと思い込むことさえある。

 しかし、そういった嵐の時期を過ぎると、私たちはもともと愛されていたのだと気づき、周囲の人間だって捨てたものじゃない、ちゃんと親切にしてくれる人がいることもわかる。



 ぼくがこの映画が好きなのは、きちんと主人公・花の成長過程がこの手順を踏んでいるからだ。

 そして、雨や雪の視点からも大きな母の愛を感じることができ、見終わったころにはちゃんと自分のルーツを肯定できる気分になるからだ。

*1:実際に同じ脚本家が執筆している