ムカデ人間2(★★★★☆)
2012/8/8鑑賞
@桜坂劇場Bホール
前作の4倍、12人つなぎ!
前作未見の状態で鑑賞しましたが、ご丁寧に前作のビデオが劇中で流れるので滞りなく観ることができました。
思ったのが、この映画、意外と狂ってないんじゃないかということ。
おそらく、肛門と口を縫合することへの執着という点が物語の推進力となっていると思いますが、そこに出てくる登場人物、すなわち主人公はたしかに狂っている。映像として映し出されるものも度を超えている。はっきり言って、痛い。
だが、お話としては幼いころに性的虐待を受けた主人公がそのうっ屈を奇行や暴力によって埋め合わせるといったもので、『タクシードライバー』('74)をなぞったような脚本であり、また、演出としても小道具や表情、登場人物の服装等でその人となりを説明する、といった極めて映画文法に忠実なつくりになっていると思いました。
観ていて、主人公がなぜここまでこの行為に執着するのか、とか、劇中で完全に殺されてしまう人間と、殺されずにムカデ人間にされてしまう人間との違いを明らかにすることにより作り手の善悪基準を図ることができそうだとか、分析的にみるときっと面白い作品になるに違いないと考えた。
これだけエクストリームな作品にも関わらず、映画的な破綻はない。ここが大きなポイントで、例えばデヴィッド・リンチやポン・ジュノの映画には、従来の映画文法を逸脱している故の、「ひょっとしたらおれは今ほんとうに狂った奴を相手しているんじゃないか?」といったものを感じるが、この映画にはそこまで感じなかった。
あくまで、被害者側にも加害者側にも背景を付すことにより解釈の幅を広げるといった、スタンダードなつくりをしており、それが主人公の男との距離を測っている。
だから、この男の思想に染められてしまうかもと言った恐怖を得ることは、ない。
もちろん、施術描写などゴアでエクストリームなシーンはあるが、比較的安心して見られる映画だと思います。