僕らがいた
2012/10/16〜17鑑賞
DVD
※注:終盤の展開に触れています!!
小畑友貴の人気コミックの映画化。監督は『ソラニン』の三木孝浩。
原作は途中まで読んでいた。厳密に読み比べたわけではないけれど、おそらくかなり原作に忠実なのではないかと思われる。コミックが完結してからの映画化ということで、映像化に関してはかなり幸福な部類に入るのでは?
前半がとにかく退屈だった。要は、くっついたり離れたりの繰り返しで変わり映えがしない印象。
あと、学園映画に関しては(公開順は逆だが)ぼくは『桐島、部活やめるってよ』を観ているからね。学園内ヒエラルキーのトップに位置する佐野(生田斗真)と、確かに偏差値は低いかもしれないがやはり人望のある七美(吉高由里子)の恋愛に何も感情移入するところがなくて、どうしても竹内くん(高岡蒼甫)の目線で見ざるを得なかった。竹内くんに関しては後で述べたい。
ただ、後半になってぐんと面白くなった。
この映画内カップルの方割れである佐野の不在がうまくサスペンスとして機能していた。
あと、社会人になっても高校のころのコードに縛られざるを得ない感じは、まだ完全に自分の道を選びきれていない20代という時期にある自分にとっては結構考えざるを得なかった。
それとね、前半ではウィークポイントになっていたある事実が、後半良い方にうまく働いていた。
この映画には大人が出てこない。
年長の人物として、竹内の姉(須藤理彩)や矢野の母(麻生祐未)、山本の家族などが出てくるが、竹内の姉を除いて、皆エゴイスティックな人物として描かれる。
特に、矢野の母を演じた麻生祐未さんの演技は素晴らしい。確かに生活力はないけれども、十分魅力的な部分もあって、ただ女性の業も併せ持っているという難しい役柄を見事に演じ切っていた。「稼ぎ口ないうえにガンだって」と笑いながら言ったシーンは慄然とした。
そして、この映画内で唯一大人なのが、竹内くん。
だから、『僕等がいた』とは、要は子供同士が恋愛で傷つけあう話であり、それを唯一利他的な目で観ているのが彼なのだ。
終盤の展開は、見返りを求める愛に応えていた自分に気付いた佐野が、七美の見返りを求めない愛し方に気づき、本当に自分の進みたい道に進むというもので、ここは自分の人づきあいに対する考え方を顧みさせられるという意味で、非常に意義があった。
そして、この展開を後押ししたのも竹内くんなんだよねー。ぼくは本当に竹内くんを慰めたい気持でいっぱいだ。
もちろん、説明過多な演出など、きらいな要素は多い作品なのだけれども、不思議と自分の心には残る作品になっていた。
4時間も恋愛話につきあえばラストはそりゃぐっとくるけど、僕等は『愛のむきだし』という4時間飽きさせない恋愛映画をしっているからね。