悪の教典(★★★★★)
2012/11/19鑑賞
@シネマQ
基本的に映画を観賞する行為はマゾヒスティックなものだと思うんです。スクリーンに映る何かに驚かしてもらいに行く側面がありますし。
ただ、年に何回か加害者的に観ることがある。
それは、シネコンでかかっている映画、それも話題作。
普段そんなに映画を観に来ない人がたくさんやってきて、打ちのめされるのをはた目から見て愉しむような、そんな作品がたまにある。
正直にいえば『告白』('10)とか『ヘルター・スケルター』('12)とかにはその側面があった。
そしてこの映画。
客席は大島優子の影響
もあってか、高校生くらいの層が多かったわけね。ぼくも高校生の頃は『バトル・ロワイアル』('00)とか観たなー、と遠い目で思った。そうか、あの頃の僕はまだ被害者的観客だったのだ。
そして、伊藤英明がシリアル・キラーに変貌していく様子も面白く見ることができた。基本的に三池印のやりすぎ演出は控えめかなと思った。それでもお話が面白いからぐいぐい魅せられるわけだけど。
ただ、おそらく伊藤演じるハスミンの過去を現わしているのであろう悪夢のシーンで、ああ、これがぼくの知っている三池印だと実感。そこからは一気に三池印炸裂!
とにかくね、死体がリアルなの。もちろんデフォルメされた「死」であり、ゲーム的感触を覚えることも可能だけど、それと同時になんか弾力性とか、そういったのが「きっと本当の死体ってこんななんだろうな」と思わせられる。実際に銃に打たれた死体がどう飛び跳ねるかなんて知らないよ。でも、こう思うのはきっと作品内リアリティが完璧に構築されている証左なのだ。
あと、伊藤英明はベスト悪と。もといベストアクト。
伊藤英明のぎこちない演技が、普段から演技しているようなハスミンというキャラクターにぴったりはまっていた。
なんというか、銃を構えて、観客が「撃つぞ」と思って心の準備が完了する0.2秒前くらいに発射されるから心臓に悪いことこの上ない。ホラーとしては最高。『ノー・カントリー』('07)のアントン・シガーを連想した。
生徒たちに課された役割から、いろいろこの物語に込められた象徴性を読み解くことも可能かと思ったが、これは後の論に譲ります。
強いて言うなら、二階堂ふみという力のある女優さんにあてられた役としては物足りなかった。サラ・コナーレベルで活躍させることが可能な女優さんなだけに。