OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

2012年観た映画ランキング(1-25位)

 ここからはきっとこれから先何回も観返すんだろうなという作品も増えてきます。



25位 ピープルVS.ジョージ・ルーカス

 ぼくはスターウォーズもろくに観たことのない人間なんですが、このドキュメンタリー映画はよかった。作品とは世に出た瞬間から作者の手を離れるものである。ジョージ・ルーカスはSWに次々と編集を加えることでその風潮に反発し、一方で二次創作に対しては寛大な態度をとる。この作品の受容のされ方が非常に興味深く、何かを熱狂的に好きになるということの本質を突いていると感じた。



24位 苦役列車

 原作小説は80年代を舞台にしているが、これを粒子が粗い映像と独特のフォントを用いることで完全に80年代の映画を模している。この一種のパロディセンスが好きだ。森山未来の徹底した下劣な演技も素晴らしいし、前田敦子も好演。強いて言うなら、やはり小品という印象が強いのであまり上位に行かないのかも。



23位 ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン

 この映画はコメディ映画の体裁をとっているし、実際に洗面所のシーンとか明らかにエクストリームな笑いにつながっている。ただ、テーマとして「自分の不幸は自分のせいだ」ということに気づくまでのストーリーになっており、ここが今の自分にすごくシンクロしたわけですよ。こういった正論はなかなか真面目な顔で言われると聴く気がしないわけですが、この映画はちゃんと笑わせた上で大切なことに気づかされてくれる。その意味で、非常に大切な作品です。



22位 この空の花ー長岡花火物語ー

 咀嚼するのに3回かかった。正直にいえば、大林監督の考えとぼくの考えでは違うところもあるし、そこがノイズになったのも事実だった。しかしだ。それまで映画内にちりばめられた断片が一か所に集まって大団円を迎えたときの感動は一体なんだ?要は、この映画はお説教的要素もあるが、その前提としてあることを気付かせる役割を持っている。戦争も、震災も、あなたにとって関係のないことじゃないということ。

 ぼくは一時期東日本大震災に関わる仕事をしていたこともあった。この映画について考えると、その時にそれだけの想像力を発揮できていたかと自問自答せざるを得ない。



21位 小悪魔はなぜモテる?(DVDスルー作品)

 『アメイジングスパイダーマン』ヒロイン役のエマ・ストーンが好演。

 これも、実は『桐島、部活やめるってよ』に近い問題意識を持っていると思う。学園内のコードにとらわれ、そのコードをぶちやぶっていく主人公の姿には胸を打たれた。しかも、ユーモアという点では桐島超えも果たしているし。



20位 愛と誠

 いろいろ欠点もあるんだけど、冒頭で妻夫木聡が「情熱の嵐」を唄ったところで一気に引き込まれたんだよね。あとさ、ゼロ年代というのは小ネタの時代だった。それが飽きられた今、次の手を模索しているとこrだと思うんだけど、この映画はある意味その小ネタ時代にちょっとだけ戻った気がして、あまりにも早すぎるノスタルジアだとは思いながらも支持したいと思った。



19位 悪の教典

『愛と誠』は反則技ではあるけれど、『悪の教典』はかなりまっとうな方法に近い形でアプローチしている。

 例えば、『告白』。あれはぼくにとって、被害者ではなく加害者として参加する映画だった。スクリーン内で起きる衝撃的な出来事にびっくりする観客を鑑賞する視点。久々に『悪の教典』はこの加害者的参加型映画として楽しめたかな。



18位 アニマル・キングダム

 最初はぴんとこなかった。主人公のジョシュアが明らかに共感を拒むような顔しているし。ただ、それは世知辛い世間に拮抗する彼なりの反抗だった。そのことに気づいてからは一気に引き込まれたね。あとは、とにかく何も起こっていないのに不吉な予感だけで恐怖感を煽る演出がとにかくうまいんだよね。すばらしいです。



17位 ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:Q

 これも1回目はぴんとこなかった口。ただね、自分ではちゃんとやったつもりだったのに周りには理解されない、てか、全然できていなかったってことないですか?僕にはあります。そして、その自分のミスをフォローしようとするも余計に墓穴を掘ることも。こういった個人的な経験にシンクロする部分もまたエヴァの愉しみだったのではないかと。



16位 ファミリー・ツリー

 個人的な経験へのシンクロという点ではこちらも大きい。沖縄という観光地に住んでいるけど、人生が順調なわけがない。そんな時に、一見すると救いがないけど、アレクサンダー・ペインが繰り返し描いてきた、今まで拠り所にしてきたものに裏切られ、それでもかすかな希望を信じていくという展開に涙した。また、前半でロクデナシに描かれた彼が見せるほんのちょっとした善意がまたこの映画の方向性を良い方に舵取っているんだ。そのほかにも魅力的なところをあげたらきりがない。テーマとしては『マグノリア』に近いものを感じた。



15位 Documentary of AKB48 show must go on 少女たちは、傷つきながら夢を見る

 一時期はこれが一位だったんだよな。とにかく、「え?これ本当にカメラの前で起こったの?」という映像の連続で、アイドルとしてファンの欲望を受け止める姿、それも年端もいかない少女が、その姿にはそれまで熱心なAKB48のファンというわけではなかったぼくの心にも刺さった。来年のドキュメンタリーも楽しみだ。



14位 裏切りのサーカス

 はっきりいって、全容を理解できたとは思っていない。それでも、ゲイリー・オールドマンが着用するスーツのような、折り目正しい上品さを楽しむことができた。2回観て思ったのが、やはりこの映画の面白さはこれだけ複雑な映画であってもエンターテイメント性に依るものだということ。諜報部員の世知辛さを感じながら、ラストに複雑な思いを感じながら、不思議な後味を楽しむのだ。



13位 アウトレイジビヨンド

 改めて感じたけれど、北野武の撮り方は未だにちょっと素人っぽい。けれども、例えば彼の絵にも言えることだが、技術的なものとは別次元で確かな世界を確立している。そして、この素人っぽさすら考え抜かれてのものじゃないかという気がしてくる。誰が小津安二郎風の会話シーンでヤクザ映画を撮るだろうか。物語としては、たけし自身が俳優として出演している『GONIN』を連想した。要は、追われる者たちの話であり、追ってくるものは押し隠してきた秘密であり、過去である。そこに個人的なコミットメントを感じた。



12位 桐島、部活やめるってよ

 今年、巷で幾度となく話題に上がった作品。5回も見ている僕だが、実は以前はそこまで評価高くなかった。ただ、ある出来事があって評価が上がった。

 5回目の鑑賞時に偶然、この作品について今まであったこともない人とお話しする機会を得た。この時に自分の中で足りなかったパーツが埋まった気がした。要は、桐島というのは他人と語ることでやっと補完される作品なのだ。映画内では決してコミュニケーションの達成に至るまでは描かれていない。そこが、この映画が観客を動かす何かなのだろう。



11位 ヤング≒アダルト

 これも本当は他人といろいろ意見交換したい作品ではありますよね。

 要は、これ「桐島が部活やめないで20年たった後のリサの話」とも読めると思います。実際は学生時代カースト上位だった人って、その後も抜け目なく勝ち組を進んでいく。そういった事例を描くことで、確かに救いはないかもしれない、でも、戦える。そんな気がしてくるのです。



10位 メランコリア

 映画の効用って、自分ではできないことを映画の中の人物にやってもらうことだと思っていて、その意味でこの映画は自分にとって救いかもしれない。

 要は、自分はうつになることができないからキルスティン・ダンストになってもらって、ついでに世界も破滅させてもらう。そんな感じです。特にさ、ここでは結婚という一般的には幸せの頂点と言われることに対してそれをめちゃくちゃにしているから、そこで一種の爽快さがあるわけですよ。個人的には。



9位 ゴッド・ブレス・アメリカ

 やっぱり、いらいらしている時には銃でもぶっ○したいと思うし、マナー違反している奴を見かけたらぶっ○したいとは思っちゃったりします。そういった思いを映像化しただけでえらいと思います。

 ただ、主人公たちも所詮テレビから情報を得ている時点で変わらないという批評的なまなざしを持っているところも素晴らしいと思います。



8位 ザ・マペッツ

 マペッツが『ブルース・ブラザーズ』をやるような話なんだけど、とにかく全編にわたって多幸感があふれ、ビルグドゥス・ロマンとしての強度も持ち、ラストの感動も素晴らしいという作品。メタ的なギャグが多いのもくすぐってくれたね。語ること少ないんだけど、とにかく楽しかった!



7位 SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者

 シリーズのひとまずの完結編にして最高傑作。これまで見続けてきてよかったと思った。

 ラッパーになる夢を諦めてやくざな商売に身を染めていたMIGHTY。一方、かつての盟友IKKUとTOMは貧乏ながらもラップを続けていた。この二人の運命が交錯するフェスのシーンの長回しは日本映画史上に残るんじゃないかと思います。



6位 007 スカイフォール

 あまり007シリーズの熱心なファンではないのですが、これは面白かった!

 いつかトム・フォードのスーツを着こなせるような男になりたいなあと思いながらうっとりとスクリーンの中を駆けるボンドを眺めていました。

 あと、この映画のテーマは要するに母を乗り越える話で、スタンダードなアメリカ映画との違いはそこかと思ったし、実は父を乗り越えるよりもそれは難しいのかもしれない。その点で僕的にも共感度MAXでした。



5位 ミッドナイト・イン・パリ

 ぼくね、この映画を初めて見た時に主人公がフィツジェラルド夫妻に会うシーンで涙がこぼれてきたわけよ。ずっと念願に思っていたことが叶うときって、どれだけうれしいんだろうと思ってさ。

 よくよく考えれば、優れたアーティストは常にタイムスリップをしているような感覚を持っているのかもしれない。これはただその様子を映像化しただけなのかも。着地点も好みだった。



4位 ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜

 146分と長尺な作品にも関わらず一時も飽きを感じなかったのが素晴らしいと思って、これはちゃんと最初で問題提起を行っているからだ。

 テーマは差別。ただし、それは黒人であるということに限っているわけじゃなく、もっとミニマムな、共同体の中で他者との差異を図る行為のことであり、この映画はそれに対するユーモラスな反撃を描いている。だから、ある意味今年観た映画の中で一番のバトルだったかもしれず、それがこの物語を引っ張って行った原因でもあるわけだよ。間違いなく傑作!



3位 夢売るふたり

 ぼくが日本映画好きなのって、要は孤独に効くからじゃないかなと思っている。この映画の冒頭で主人公夫婦が店を切り盛りしている様子に時折これから登場する女性たちがインサートされるシークエンス。ここだけで自分の孤独が癒されるのがわかる。

 時折思うよ。自分の孤独を買い取ってくれるんなら、全財産くらいあげてもいいかもって。

 それは間違っているのだけど、この映画はそういった孤独ゆえの過ちだったり、破綻してしまった人間関係だったりを肯定してくれている点で、非常に意味のある作品だと思いますた。



2位 おおかみこどもの雨と雪

 しばらくは「まだ劇場でおおかみこどもがかかっている」ということをよりどころにしていた気がする。

 劇場で何回か見てボロ泣きしたんですが、おそらくこの映画の素晴らしいところって、私たちが普段無意識に収まってしまっている、幼いころに親に無条件で愛された記憶を呼び覚ましてくれる。そしてそのことで現在を肯定してくれるというところにあると思います。



1位 サニー 永遠の仲間たち

 未だにサニーに乗せて踊るシーンを思い出すと泣けてくる。

 年代も人種も性別も境遇も違うけれど、そしてこんなにキラキラしてはいなかったけれど、一番高校時代を思い出させてくれたのはこの映画。

 はっきりいって、『サニー』はファンタジーだ。『桐島』や『ヤング≒アダルト』に比べるとリアリティは足りない。でも、それでいいのだ。現実に疲れた時に、主人公ナミが失恋で悲しむ少女ナミを慰めるように、この映画が必要になる時が出てくるのだ。



 ということで、今年のNo.1映画は『サニー 永遠の仲間たち』でした。