OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

東京家族(★★★★☆)


ハンパな強がり TOKYO来てから


解説

男はつらいよ」「学校」シリーズの山田洋次81本目の監督作。映画監督生活50周年を機に、名匠・小津安二郎の「東京物語」(1953)にオマージュをささげた家族ドラマ。瀬戸内海の小さな島に暮らす平山周吉と妻のとみこは、子どもたちに会うために東京へやってくる。品川駅に迎えにくるはずの次男・昌次は間違って東京駅に行ってしまい、周平はタクシーを拾って、一足先に郊外で開業医を営む長男・幸一の家にたどり着く。すれ違った周平も遅れてやってきて家族が集い、そろって食卓を囲む。「東京物語」の舞台を現代に移し、老夫婦と子どもたちの姿を通じて、家族の絆と喪失、夫婦や親子、老いや死についての問いかけを描く。(東京家族 : 作品情報 - 映画.com

 山田洋次監督の映画は『男はつらいよ』シリーズをだいたい10本くらい見て、あとは21世紀に入って撮った時代劇とか、『幸福の黄色いハンカチ』('77)、『おとうと』('08)などを見ている状態。あと、この映画の原案になった『東京物語』('53)も鑑賞済み。

 一応、オマージュをささげた別の話ということになっているけれど、骨格はほとんど一緒なので、リメイクといっても差し支えないでしょう。
 結論から言うと、まず一本の映画としての完成度はほぼ文句なし。ぼくの好みである山田監督の端正な演出が施されていたし、その中で小津安二郎監督風の人物切り返しショットが来ると一瞬ドキッとさせられる、その感じもよかった。あとはお葬式について、あれは決して冷淡さを描こうとしているのではなく、むしろ告別式のころになると少しは気持ちも落ち着いていることが多いので、実はリアリティのある演出なんじゃないかと思った。
 ただ、あまりにも演出に破綻がないので中盤あたりちょっと眠くなったことを正直に申し添えておこう。


 あとは、『東京物語』から変更を加えたことで違和感が生じた箇所があるのは事実。いちばん大きいところとしては、もとの映画で原節子が演じる平山紀子にあたる人物に関する設定を大きく変えたことで、確かに監督が次世代に思いを託すさまがストレートに伝わって来はしたけれど、あれだけの交流ではたしてこの人物がここまで行動するかなという風には思えてきてしまう。
  
 もちろん、山田監督の若い世代の捉え方には年寄り監督らしく時代錯誤な感覚はぬぐえない。そもそも、橋爪功吉行和子の演じる夫婦の子供に妻夫木聡をキャスティングするというのは、一見すると暴挙に見える。妻夫木聡は1980年生まれなので、おそらく撮影時は32歳だが、ベビーフェイスのためそれ以上に幼く見える。彼の恋人役である蒼井優も然り。
 このあたり、正直最初はノイズになった。出産年齢とかを考えても、どう見ても西村雅彦と兄弟には思えないし・・・。やっぱり孫にしか思えないと。

 ただ、ぼくはこのキャスティングの違和感は、それでもこの妻夫木聡と同年代の人にメッセージを伝えたいという山田監督の意図だと受け取った。つまり、おじいさん世代のたわごとではなく、自身における問題として受け取ってほしいと。
 確かにこの映画はご高齢の方を中心に見られているのは事実だし、数少ない若い世代の観客もそのメッセージ内容に対し拒否反応を示している人がいるのも事実だ。

 でもね、やっぱりどうしても考えさせられちゃうんだよな。親不孝してきた身としては。あと、山田監督は山田監督なりに子供たちの世代について理解を示そうとはしている。彼らが広島の地元を出て行ってしまったことや、自分たちの仕事や生活で忙しいことは重々承知している。それでも、今まで自分がしてきたことは無駄だったのかというアイデンティティ・クライシスと、次の世代に希望を託したいという思いの狭間でなんとか落とし所を求めているのだと感じた。
 そういった姿勢で伝えようとしているから、個人的にはどうしても受け流す気にはなれない。

 とりあえず、20代や30代くらいの人は「つまんねー」という感想を持ってもいいので、一回くらい観てほしいと思いました。

東京家族 DVD

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