OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

マン・オブ・スティール(★★★☆☆)


スーパーマン≒アメリカ 
スーパーマンlovesエイミー・アダムズ 
すなわち、
アメリカlovesエイミー・アダムズ

解説

ダークナイト」のクリストファー・ノーランが製作、「300 スリーハンドレッド」のザック・スナイダー監督のメガホンでリブートされた新たな「スーパーマン」。無敵の能力を備えながらも、それゆえに苦悩して育った青年クラーク・ケントが、いかにしてスーパーマンとして立ち上がったのか、これまで描かれてこなかったスーパーマン誕生の物語を描く。クラーク・ケント=スーパーマンに、新鋭ヘンリー・カビルを抜てき。育ての親ジョナサン・ケントケビン・コスナー、生みの親ジョー=エルにラッセル・クロウ、ヒロインのロイス・レインエイミー・アダムス、仇敵ゾッド将軍にマイケル・シャノンなど豪華キャストが集結。脚本に「ダークナイト」3部作のデビッド・S・ゴイヤー。音楽も「ダークナイト」や「インセプション」など、近年のノーラン作品を手がけているハンス・ジマーが担当。

リブート元のスーパーマンはイメージとしてしか知らない状態で鑑賞。


 ブロックバスター映画を語る資格は自分にはあまりない。確かにあれだけのスピードで繰り広げられるバトルやアメリカの雄大な景色を見せられると文句を言う気は失せるものの、観終わった後に残るものが少ない映画はちょっと苦手。
 ので、自分側に引き寄せるとするとエイミー・アダムズのかわいさで語るしかない。実はアメリカに一番愛されている女優である彼女のことを。


 エイミー・アダムズが最初に注目されたのは『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』('03)だろう。この時点で、スピルバーグというアメリカ映画の中心にいる監督から目をかけられたことになる。
 それから、インディー映画『Junebug』('05)での注目を経て、少なくとも日本においての注目度が飛躍的に上がったのはディズニー映画『魔法にかけられて』('07)。

 ぼくもこの映画で知ったのだが、ディズニー映画でありつつディズニー映画にアイロニックでメタなツッコミを入れるこの映画の主人公・ジゼルを演じた時点でエイミー・アダムズは33歳。確かに童顔で幼児体型気味ではあるものの、日本でこの年齢でプリンセスを演じることができる女優がいるだろうか。いや、ない。


 ともあれ、現在につながるエイミー・アダムズ色はここに端を発しているような気がする。コメディエンヌの要素があり、限界までリアリティラインを下げられる。
 特に、『ザ・ファイター』('10)や『ザ・マペッツ』('11)で、自立できないダメな男を励まし、成長を促す役割などはぴったりだろう。

 そしてここで、方やボクシングという『ロッキー』('76)以来の再起のドラマの片棒を担ぎ、方や現在ではすたれてしまったマペッツの復興に手を貸している。すなわち、今彼女に期待されているのは、アメリカが失ってしまったものを取り戻す手助けをする女性である。

 
 ポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』('12)はアメリカ戦後の語り直しであり、もちろんこの監督はそんなに素直ではなかったが。
 やはり極め付けはクリント・イーストウッド主演『人生の特等席』('12)であろう。完全におじいちゃんのイーストウッドに、昔ながらのはねっ返りぶりを見せ、ベースボールというアメリカを代表するスポーツの復活を助けている。

  
 では、今回の『マン・オブ・スティール』('13)はどうか。
 こちらが『ダークナイト』('08)以降の疲弊したアメリカの中で、スーパーマンというアメリカを代表するヒーローを復活させることの意義がある程度アメリカの現代に左右されることは間違いない。
 エイミー・アダムズをキャスティングしているのだからその意図はあるのだろうが、スーパーマンスーツが鉄製の黒いコーティングがされていたりと、作り手の意図がどちらにあるか分かりづらかった。
 要はこの映画、牧歌的な風景やエイミー・アダムズ、ケヴィン・コスナーといった役者の持つ陽の印象を持つ部分と、クリプトン星の描写やCGで再現された荒らされた町並といった陰の印象を持つ部分の喰い合わせが悪くて、どちらに向かっていけばいいかわかりにくいのだ。まあ、後者がクリストファー・ノーランのカラーである可能性もあるが。
 次回作以降は向かうべき場所が定まっているものと思いたい。


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