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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『AURA〜魔竜院光牙最後の戦い〜』(★★★★★)

 田中ロミオ原作のライトノベルを『瀬戸の花嫁』('07)『Angel Beats!』('10)等を手掛けた岸誠二が監督。いわゆる「中二病」の少女との巻き込まれた少年の交流を描く。


 初めに言っておく。これは映画としてもアニメとしても大したことないし、たぶん歴史には残らない。けれど、ぼく乙郎一個人としてとても突き刺さってしまった。ラスト20分くらい号泣していた。
 原作を既に読んだことがある。特に映画化に当たって付け加えられた要素は無いように感じた。あと、岸誠二監督のアニメも『マジカノ』『瀬戸の花嫁』を見たことがあるが、パロディを無節操に詰め込む演出方法も抑え気味。正直に言えばドリームソルジャーが次々に登場するくだりとか、この岸演出で処理してほしかった気がする。ひょっとすると、岸誠二お得意の小ネタ演出を抑えたのって、監督自身がこの作品に敬意を表してのことかもしれない。ただ、ドリームソルジャーの面々が出てくるあたりはその過剰さでもって盛り上げてもよかったんじゃないかと思うんだよな。
 

 ただ、この原作を発表から5年経った今アニメ化する意味はあったかと問われたら、ぼくはあったと答えたい。なぜなら、この5年間っていわゆるオタク的なものが人口に膾炙された時期だったから。むろん、ニワカの流入等の問題は新たに発生しているのだろうけど。
 まだまだ、いわゆる中二病的な拗らせを持つ若者は各地にいるだろう。この物語は「私たちがなぜフィクションを必要とするのか」に関しての考察になっているし、今は前述のような状況があって、この物語の収束の仕方が説得力を増しているように思う。

 
 演者としては、花澤香奈さんの演技が素晴らしい。『言の葉の庭』('13)の役どころに少し近い気がした。彼女がいわゆる「正気」を取り戻しつつある発言、そして「正気」を取り戻した時の台詞「何それ?」ぼくは泣いてしまったよ。
 花澤香奈さんの演技は卓越したものではない。ただ、それゆえアニメの中の人物のリアリティを揺さぶる効果が発生している。2.5次元感があるのだ。それゆえ、アニメの中の現実と夢想の間で揺れ動いている人物を表現するのに適した声だと思う。能登麻美子さんにもそれを感じるが、彼女はすでに強さを得てしまった気がするのだ。


 あと、『桐島、部活やめるってよ』('12)や『ふがいない僕は空を見た』('12)も連想させたので、それらの作品が好きな方は比較してみる意味合いでもおすすめしたい。