OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『映画「立候補」』(★★★★★)


 平成23年の大阪府知事選挙において、マック赤坂をはじめとする泡沫候補とされた候補者の姿に迫るドキュメンタリー映画。


 まず考えたのは。この映画、完全にこの歌の世界↓


 マック赤坂にせよ外山恒一にせよ羽柴秀吉にせよ(この映画には出ていないけど)又吉イエスにせよ、いい印象は持っていなかった。その印象は大きく変わったわけではないし、今後も彼らに投票することはないと思う。けど、それこそ10度20度30度くらいは変わった。
 この映画では平成23年の大阪府知事泡沫候補に焦点を当てている。その中でも、マック赤坂は間違いなく「マジ」なのだ。だから、映画館を出て目に入ったポスターに書かれていたキャッチコピー「あなたはまだ負けてすらいない」は胸に突き刺さった。
 これは同じ劇場で見た『標的の村』('13)にも通じるけれど、負けるとわかっていてもそれが後世につながるのであれば闘いをやめないという姿勢は胸を打つ(マック赤坂と一緒にされるとオスプレイ反対派は怒るかもしれないが)。児玉清の言葉を借りれば「負けるなら美しく」といった処か。
 これは若松監督の連合赤軍の映画を見たときにも感じたことだけれども、この人物のやっていることは世間一般から言って正しいとは言えない。それでも、胡坐をかいて批判して自分の手を汚さないよりかは幾分マシじゃないのか。画面の向こうからマック赤坂はそう言っていた。


 バランスのとり方がうまいと感じたのは、決してマック赤坂を美化して描くのではなく、彼が『ハートロッカー』('09)のジェームズ軍曹よろしく、一種の立候補ホリックになっているのではないかと考えさせる余地を残している。息子の視点も興味深い。

 ただ、これだけ観客に訴えかけるメッセージ性を持ちつつも、極めて間口は広く取っており、エンターテイメントとして見ることができる。やはり橋本の陣地に乗り込む場面はドキュメンタリーの快楽を感じた。
 これは、皮肉にもマック赤坂という人物の政治性の薄さが関係していると思われる。それなので、小難しい内容かと思って敬遠している人にもおすすめです。