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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『浮き雲』(アキ・カウリスマキ)

 レンタルDVDで鑑賞。かなり好き。今まで見た中では一番見やすいと思った。アキ・カウリスマキ監督の円熟を感じた。初心者にもおすすめかも。
 カウリスマキ作品の中では見やすいと書いたのは、これがかなり強固な物語構造を持っているから。けれども、冷静に考えるとハリウッド的な正しさではない。ただ、物語が進むにつれて登場人物に肩入れし、その感情移入構造がラストにある種のサスペンスを引き起こす。で、なんでここまで登場人物に肩入れできるのか、いくつか理由があると思う。まずひとつは、画面がとても目に優しいから(笑) 深い色のブルーや暖色のオレンジ等、実はすごく計算された色彩やうっとりするような構図等の画のつくりの心地よさがこの世界への愛着につながる。
 あと、物語として、この人物がどこまで不幸になるのと思わせられるところがある。しかも、幸せになれると思いきや・・・の繰り返しだから、だんだん不安になってくる。物語において不幸な人物を見ると、観客は一種のカタルシスを得る。そのカタルシスが終盤の展開で跳ね返ってくる。
 そして、最後に挙げたいのは演者の力。カウリスマキ作品を何作か見ていたらおなじみの顔もたくさん出てくるし、主人公のカティ・オウティネンに関しては言うに及ばずといったところだが、個人的に最も惹かれたのは、支配人のおばあさんを演じたエリナ・ロサ。
 この方、なんというか本当に38年間店を守り続けてきたんだろうなとか、善人の持つ説得力を体現するようなキャスティングだった。終盤の展開とかはっきり言って理屈は通らない。ただ、利他的なことをしたからちゃんと返ってきたということ。それに説得力を持たせる作業が素晴らしい。
 あとは、地味に夫婦の部屋において、亡くなったと思われる子供の写真が映るところなんかよかった*1。そしてこの映画の最後の献辞「マッティ・ペロンパーに捧ぐ」にはぐっとくるものがありました。
 

*1:フォロワーさんに教えていただいたのだが撮影前に急逝したマッティ・ペロンパーの要書記の写真