OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『狼男アメリカン』(ジョン・ランディス)

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 レンタルDVDにて鑑賞。
 最近の映画で人間から異獣へ変化するシーンをとる際には、CGの変化もあるのかリアリティを重視した結果なのかは知らないがさらっと描くようになった。だが、この映画が公開された80年代はVFXの技術を見せるためかなり尺がとられている。技術だって確かにぎごちない。しかしながらそれが、肉体から分化しきれていない痛みを生じさせる。
 ドラキュラやフランケンシュタインの怪物が早めにイメージが固定されていたのに比べ、狼男というのはかなり後までイメージの刷新が行われているような印象がある。ここで描かれている狼男像は、『おおかみこどもの雨と雪』にも影響を与えている。
 この映画に影響を受けて書かれたと思われるのが、SPARTA LOCALSの「オオカミ男のうた」と言う曲なのだけど、つまりは狼男というのは恋愛ひいてはコミュニケーション全般を阻害するコンプレックスの象徴として描かれる。
 この劣等感に対し、陽の解決を与えたのが『おおかみこども~』で、陰の解決がこの映画。全体的に安定した演出で進み、終盤でランディスお得意のカークラッシュが必然性もなく挿入されるところで狂ってくるんだけど、この展開がまさに人間不信感と呼応している。
 そもそも、狼男に2回目に変身する場所がポルノ映画館というのはどうしたって『タクシー・ドライバー』を連想させるわけだし、あとこの映画はかなり暴力的にエンドロールに入るが、そこでかかる曲がストーリーの展開とは不似合いなくらい明るくて感情の置き場がない。
 気になって検索したところThe Marcelsの「Blue Moon」という曲で、歌詞を改めて読むと皮肉すぎて何とも言えない。
Blue Moon - ~jazz lyrics.com~ジャズ詩和訳サイト
 後になって考えると冒頭の男二人の会話の時点で、女性不信を暗示するようなセリフは出てきているんだよな。そう考えると案外重い宿題を課す作品なのかもしれない。おそらくはアメリカ人がイギリスで狼になるという展開も暗示がありそうだが、勉強不足なので今後の課題にしたい。